映写雑記

映画館の設備視点

映画館とスタジオ環境の関係を考える

こんにちは。

 

作品のレビューとかも書きたいなと思っているのですが、書きたい作品の全国のファーストラン上映が終わったら書こうと思っています。

今日は、映画館とスタジオ環境についてだらだらととくに纏まらないネタの考えです。

特に音をメインで書いていきます。

 

映画館でスタジオそのままを再生するという事

たまに論争が起きる内容ですね。制作側の人達は自分たちの作った音をそのまま提供してくれと思っている人がほとんどではないでしょうか。当たり前です。自分の子を勝手に染められたくありません。

しかしそれは可能なのでしょうか。

全く同じ建築、全く同じ音響設備、全く同じ音源だったら可能でしょう。

まずそれをするなら作業用のコンソールを全て撤去して劇場の椅子で部屋を埋めるところからしないと同じ環境になりません。

スタジオのミキサー等の機材はとても大きいのでかなりの反射面になります。なのでほとんどのスタジオではスィートスポットと言われる一番音が良く聴こえるポジションの前にミキサーがありますが、少なからず手前で大きく反射している音を聴いているわけです。あとコンソール類が邪魔して届かない音もあります。

実際、いろんなスタジオを回って音を聴かせてもらいましたが、かなりの影響を感じました。

 

映画館ごとに音が全く違う

映画館の設備もそのスクリーンによって全然違います。

Bチェーンで測定の見た目上は似たような音を目指していきますが、同じf特をもった測定結果の劇場でもスピーカーが変われば音色も聴こえる音も変わります。

ポイントソーススピーカーなのかラインアレイスピーカーなのかでも変わります。

ユニットのクロスオーバー位置でもネットワークがデジタルなのかアナログかの差でも変わります。

壁の表面や壁の裏側の建築の仕様でも音が変わります。

それらがその劇場の味となり映画館を楽しむ文化の一つでもありますが、神経質に考えるのであればこれでは作られた音を流せは無理です。

 

スタジオも音が全く違う

そもそも、スタジオ事にも音が全く違います。あそことあそこのスタジオ同じ音がするなって思った試しが一度もありません。「似てる」はありますが、同じ音だなって思った事が一度もありません。

なので制作されたスタジオ事になんかそのスタジオっぽい音が入った作品が来るな~って思います。たぶんかなり分かりやすい作品であればどこのスタジオで作られたかって音を聴いて当てられるような気がしているぐらいです。

つまり、Tさんで作られた音で合わせた劇場でSさんで作られた作品を掛けたらSさんの作品はなんか違うってなりますし、逆もしかりです。

これは海外でも一緒です。狐さんや空歩さんとか兄弟さんとかも結構スタッフの違いとは別の違いを感じます。

 

こんなことが先日ありました。

とあるスタジオで作られた作品の音を作った人がスタジオだといい感じだった演出が、いろんな映画館で実際観るとなんか過剰になって全然違う演出になってしまっていたと言っていて、その作品は僕の所でも掛かっていたのですが、やはり同じちょっと違う感じだったのですが、あのスタジオで作られたと知っていたので、まあその演出しようとするとそうなるわなって凄く納得しました。

僕が良く知っているIさんの作品もAなのかかTeのスタジオで作られたかでも結構違いを感じます。

 

以前少し話題になっていた、映画館の音量問題ですが、出てくる音が違うと音量も変わるんです。作った人達が真剣にシビアに作れば作るほど、こちらで流すときにその最高のポイントとずれ易いために上映が難しくなるというジレンマがあります(僕はそこが楽しいのでもっと突き詰めて作ってもらって良いと思っています)。

同じピンクノイズ85dB基準でもシビアに作るほど、難しいです。

 

じゃあどうすれば良いの

じゃあどうしよかって話なんですが、「正直わからん」です。

昔は、劇場側で作品ごとにそもそも弄ってしまって上映しやすい形に変えてしまえばいいのではという考えの時もありました、しかしそれは作られたモノを改変してしまう形になります。なので良くないと思いやめました。

最近、僕がやっているのは、いろんな方々の協力のうえでスタジオ側の音を知る機会を頂いたので、上映した時に作品ではなく劇場とスタジオのマッチングを聴感上で合わせるという形を取っています。

幸か不幸か、耳はそこそこ良いらしいので、なんとなく差分が分かります。

しかし完全に合わせる事は出来ないので箱とシステムと作品が喧嘩しない感じを狙うというのでしょうか。ニュアンスの問題なので言語化ができませんが、ルムアコを視て行くという感じです。

電気的にどうしようもない場合はアプローチの方法で嘘をつくという事もします。

あと、作品で合わせるワケではなくその箱で掛かる複数の作品も観ないといけないので、結構悩みどころです。あっちを立てればこっちが立たずという状況が良くあります。あまりに逸脱した場合は専用にこさえます。

 

その精度を上げて行くために最近は自分でシステムの特性を測定したり箱の特性を測定したりとなんか映写じゃないような事を良くやっています。まあ本当のプロにはかないませんが。その本当のプロたちに教えて貰えているので遠く外れてもいないと思います。

音響関係のベテランの人はみんな口をそろえて言いますが、測定では見えない部分がまだありすぎるので測定値を元に聴感上で最終的にはやる事になると言います。

実際その通りで、測定値上は本当にほとんど一緒なのですが、一緒になりません。映写もいろんな知識を持っていろいろ試してみないとだめやろなぁという感じです。

 

全く纏まりませんが、音響って楽しいなぁ禿げるなぁって思いました。

 

 

DLPとSXRDを比較したよ。

こんにちは、実はコロナに掛かってしまい暫く引きこもっていました。

今はもうかなり復調して隔離期間も終わり、職場にも復帰しています。嗅覚が0になってしまって少し大変です。

 

さて1月に職場の方でプロジェクターの入れ替えをしました。プロジェクターはバルコのRGBプロジェクターとフォスファーの二種類を導入し、SXRDは撤去する事に。

プロジェクターのインストールと少し使ってみての使用感を含めてSXRDと比較してみたいと思います。

あとSXRDを暇つぶしでバラバラにして遊んでたのでその時の写真も少し貼っておきます。

 

DLPとSXRDの比較

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RGBレーザーのDMD回り

さて、念願のDLPというか、DLP自体は少し使っていた期間もあるのですが、当時は僕もぺーぺーだったので、少し経験を積んだ今の僕なら少しはまともな使用感なりDLPの感想ができるはず。

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SXRDの液晶チップとかを掌るグラフィックボード

SXRDとの大きく違うなと思ったのは描画の方法ですね。
SXRDは画面中央から画面4分割されたものが外側に広がっていく描画になります。

DLPは多分、単板式と三板式とで違うかもしれませんが、多分瞬間的に画面領域全てを切り替えているんですかね?ちょっとここは良く分かりません。ディスプレイみたいな走査線方式じゃないとは思うのですが。

正直この描画の違いって映像制作のプロじゃない僕でもわかるのかなと思っていたんですが、やべえすげえ分かる。
SXRDで見慣れ過ぎていたのでDLPの描画に凄く違和感を感じてしまいました。

もちろん他所でDLPは何度も観ているのですが、実際自分の見慣れている環境で同じ作品を見比べると、あーって声がでるぐらいしっかり比較できました。他所だと見比べができないからね。

知り合いのアニメ制作のKさんはめちゃくちゃこのSXRDの描画が嫌いなんですが、まあ確かにアニメとはめちゃくちゃ相性が悪いですね。

あとやはり、フレーム事の切り替わりがスムーズなので画面の残像感が薄いです。この辺は市販の液晶テレビ等の特性と変わりませんね。

あとDLPは黒が綺麗にでるので、色の奥行が良く出ています。HDRかな?って思う感じの色になりますね。ここはDLPの強みですね。

ぶっちゃけ色に関しては黒以外はさほど驚く差は無いと感じます。この違いは光源の違いだからなのか方式の違いなのか、メーカーの違いだからなのか環境の違いなのか個体差なのかといろんな要因があるので、一概に僕の感じている差をSXRDとDLPの差だと言えません。というか一応、Rec.709の色域基準なのは変わらないのでそれもそうですねって感じ。

 

個人的に、実はSXRD若干アンチ派だったんですが、入れ替えてから「え、SXRDって実は結構優秀じゃん」とSXRD肯定派に変わった部分もあります。

その最たるものが、SXRDはモアレが出ない

いやぶっちゃけると僕、ずっとSXRD使っていたのでモアレという文化を知りませんでした。文化というか現象。そう、プロジェクター使ってる人からすると当たり前の現象であるモアレを知らない生活だったんです。それはSXRDではモアレが出ないから。

DLPはダメですね。7割ぐらいの感覚でモアレとの戦いになりました。

モアレの対策って主に二種類だと思います。
スクリーンを張り替えて、サウンドフォールの位置をずらすかモアレ対策されたスクリーンを使うというのが一つと、現場できる対策はフォーカスを甘くするです。
モアレはその性質上フォーカスを甘くすると軽減していき、どこかで消えます。
ただし画はぼっけぼけになります。

スクリーンの張替えはコストかかりますし、張り替えてもモアレは出るかもしれないので、スクリーンガチャをしないといけなく現実的じゃないです。
なのでフォーカスをぼかしてモアレとフォーカスの甘さの妥協点を探る形になります。
たまに、めちゃくちゃフォーカスがぼけている劇場がありますが、あれはモアレの対策だったと初めて知りました。各劇場によってフォーカスを優先するかモアレを優先するかの流儀があるみたいです。

 

DLPの良さはユニフォミティでの色ムラが発生しないという良さがあります。
だいたい4角の方から色ムラが発生します。いやほんとこれ結構な頻度で発生するんですよね。これから解放されるだけでも僕はハッピーです。

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SXRDの液晶チップとプリズムユニット

R320も優秀な部分がある

DLPがSXRDがという話ではなく、モデルの話になるんですが、SXRDのR320は使用されるレンズが大きいです。今回導入したDLPのレンズと比べると3倍ぐらい大きさが違います。最近のレンズちっさ、、、って思いました。
しかし、レンズは大きい方が画角調整の自由度が高いというメリットがあります。それとレンズの良い所と言われる範囲が広いため、映写角度や映写窓の位置による環境的デメリットに左右されにくいという良さがある事を知りました。

環境によっては今の現行機種のDLPたちよりR320の方が画郭という面では有利に立てる場合もあります。うん、実は優秀だったぞソニーごめんな。

ただプレゼンテーションCSの4Kを4Kというのは認めんぞ?

 

実際どっちがいいの?

クオリティ面で言えば一長一短なのでDLPでもSXRDもといLCOSでもどっちでもいいかなと思いました。設置環境で選ぶというのが正しいきがします。

 

次はレーザーとキセノンについて書きたいな?

映写のお仕事「試写テスト」

こんにちは、今回は以前も映写のお仕事は軽くブログにしましたが、映写のお仕事の一つ、「試写テスト」に絞って解説していきたいと思います。

ついでに、最近SNS上で話題の「上映の音量を決める」は「試写テスト」の中に入っている事なので合わせて解説します。

 

そもそも「試写テスト」とは

そもそもとして、「試写テスト」って何という話です。よくある試写会とかそいうのとは違います。これは、お客様にお出しする前に上映をしっかり最後まで問題なく行えるかをチェックするテストの事を言います。

デジタルシネマになってからは、工程が減り「試写テスト」一本にかかる手間と時間は大きく削減できるようになりました。大多数のデジタル化が進んだ映画館、主にシネコンではこの試写テストを行う事をしてないと聞いています。確かに人件費を考えると馬鹿にならないので、それもしょうがないとは思っています。しかし、それはレストランで「毎回仕入れ先が違う材料と調味料だけど、マニュアルで分量が決まっているレシピを見て作ったから味見しないでお客さんに出す」に等しい行為です。

シェフはクリエイターだけどね?とか映画はどちらかというと調理済みの料理なのでは?というちょっとヤヤコシイ事は置いておきます。

飲食店経験者や似たような状況を経験してお金を頂いた事がある人達はこれがどれだけ恐ろしい事かはすぐに通じると思います。

映写の「試写テスト」はその味見をする行為で、味に問題があれば問題を解決して上映するために必要な作業です。

 

「試写テスト」を順番に解説するよ

次はその「試写テスト」を順番に解説していきます。だいたいどの映画館も同じような作業になりますが、僕が行っている事を中心に解説します(あんまり他の映画館の試写テストの方法をしらないのもある)。

 

1、再生&変な挙動をしないかチェックするよ

当たり前ですが、再生ができるかを確認します。数百~数千本に一本ぐらいの割合ですがたまーーーに再生できない場合があります。またはデータが壊れている可能性がある場合もあります。

私は両方とも経験した事があり、試写テスト時に、「あれ?再生できんのだが?」とか「あれ?再生途中で止まるんだが?」という事を体験しています。

データの破損に関してはTMSと言われる中枢のサーバーがあるのですが、その中でデータの破損チェックができるのでそれを通していますが、TMSから各プロジェクターにデータを送ったあとに破損する可能性も考えられるので、完全に信用できません。

次に変な挙動をしないかチェックするですが、これは時間の都合上で事象を発見できるかは運が絡んできますが、シーンのスキップである程度映画を飛ばしながら見て行って、変な音や変な画になっていないかのチェックをします。

過去に、再生はできるけどある一定の時間以上の再生ができないとか、一定時間以上の画がおかしいというトラブルがありました。なのでこれも必ず行います。

 

35mmフィルムの試写テストでは、シーンのスキップはもちろんできませんし、フィルムの物理的な状態もチェックしなければいけないので、ストップウォッチ片手に持って、異常があった時間と異常内容を1Rずつきっちりレポートに取りながら試写テストを行うのがメジャーだったと思います。2時間尺の映画で大体6〜7Rぐらいですので、パンチングと言われる右上の丸いマークを全部見て回し切るまで終われないし、映画を普通に観れない作業でした。
僕めんどくさいからレポート書いてなかったけど

それと挙動確認は主にアクションの確認になります。アクションは映写機を止めたり、場内灯のオンオフやレンズ、音声フォーマットの切り替えアクションがあります。
35mmフィルムの映写は、銀紙テープをフィルムに直接貼って、銀紙に反応するセンサーが映写機にあるので、銀紙がちゃんと反応するかのチェックが必要でした。それと他劇場で使われたフィルムは銀紙を剥がされてない事が結構あるので、映写機モデル事に銀紙の形が変わるため誤作動の原因になります。その剥がし忘れていて編集中に見落としてしまった可能性がある銀紙を試写テストを兼ねてチェックしていました。

銀紙はフィルムに貼ってある写真があるとわかりやすいんですが、銀紙が残り少ないのであまり無駄にできないためサンプル作成は見送りました。スミマセン

 

2、画面サイズを確認するよ

めちゃくちゃ初歩的な事ですが、画面サイズをチェックします。
映画のデータ名って「GundP_FTR_F」みたいな名になっているのですが、最後のFの部分が画面サイズになっています。Fだとフラット、つまりビスタサイズですね。Sだとスコープ、シネマスコープサイズになります。ただ、たまに書いてなかったり、HD、Cと別の画面サイズの通称になっていたりします。なので念のために確認します。

あと割と現場あるあるなのですが、画面サイズを思い込みで間違えちゃう事があります。例えばヱヴァンゲリヲンは序と破はフラットですがQからスコープです。Qをフラットやで~と思いこむはあり得ます。

35mmの場合は画面サイズを確認するほかに、フレーミングのチェックとフォーカスのチェックがあります。
フレーミングとは画面の上下の位置のことで、映写機にダイヤルがついているのでそれで調整できます。基本的にはテストチャートでしっかり決めていればどの映画も流せるのですが、映写角度や湾曲スクリーンなどで画面の損失が多いスクリーンの場合、プリント状態によっては字幕が切れたり次のコマが写っちゃったりするので、それを作品ごとに微調整します。

フォーカスはそのまんま映像のピントのことです。小さい配給かつ海外作品とかだと全然テストチャートとあわない場合があったりしてこちらも作品ごとに観ていきます。あと字幕です。
字幕が字幕の種類や印字の仕方で作品ごとにピントが変わってしまうことがあるので、ボケた場合は合わせます。

 

3、音量を確認して調整するよ

今ちょっと話題ですね、映画の上映する音量は映画館側で決めています。ただ映画館のシステムは映画を作っているスタジオと映画館が同じ音量で上映できるように作られていて、理屈的には映画館側で触ることはしなくていい物です。製作者たちの意図通りに再生するのも映画館の一つの仕事です。

しかし、そうは上手くいきません。

どう足掻いても作品ごとに適正な音量が違うのでチェックします。
その際に、基本的なアプローチの仕方としてはシネマプロセッサーという以前ブログでも書きましたCP650のような音量を司る機械の基準値と言われる音量を目指すのが基本になります。

よく勘違いされがちですが、映画館側が勝手に音量を作っているのではなく、正確には「基準値でいけるか?」というアプローチで音量を見ていく作業になるのです。
そして、その音量を見ていく作業には、お客様視点で視るのと映画館視点で視る2通りがあります。

お客様視点で視るというのは大体下記の理由です。

・基準値で上映した事により音が大きすぎたり小さすぎたりでお客様が不快になる。
・子供向け作品などでお子様の耳が心配

この2つが主な理由かなと思います。
お客様が不快になるというのは、聴いていてシンドイ音、つまりめちゃくちゃ痛かったりする音だったり、小さすぎて何しゃべってるか分からない等の視聴していてストレスになる要因です。これを「製作者の意図する演出の音です」とお客様に突き返すのが正しいのかもしれませんが、その事で被害を被るのは映画館です。瞬く間に「あの映画館音が悪いよね」と広がってしまい評判が落ちます。お客様からしたら「意図する音」とかそんなの知ったこっちゃないです。金返せ!で実害でるのも映画館だけですし。

もう一つは子供向け作品などでの音量はそのまま子供の耳を考慮しての処置です。
私もですが、音響関係の仕事をしていると許容する最大音量がどんどん上がっていき、爆音と言われる音が普通と感じてしまうぐらいには麻痺します。なので自分の耳を常に疑いながら子供の視点で考えて合わせます。まあほとんど感覚ですね…

次に映画館視点で視るというのは下記の理由です。

・システムが追いつかず、機械が壊れるリスクがあるため予防する
・近隣の騒音問題

この二つが主な理由でしょうか。
システムが追いつかずというのは完全に映画館側の問題です。映画の音は常に進化をしていて、20〜15年前ぐらいのシステムで今の映画の音を満足に鳴らすというのはほぼ不可能と思えるぐらいに全く別物になっています。なので古いシステムの映画館は機材を入れ替えなければいけませんが、そんな資本がまずない映画館の方がほとんどです。
そして無理して壊してしまったらそれこそ売り上げに関わってくるので壊さないように運用しなければいけません。その対策の一つが音量を下げるになります。

それとよくあるのが騒音問題です。映画の基準音量って日常生活の中ではかなり爆音の部類です。そして建物でこれを遮音するのは相当難しいです。それこそ石油王でなければできないぐらいお金がかかります。そのため、漏れた音が近隣の住民だったり商業施設だったりに直撃し、騒音問題に発展します。泣く泣く音量を下げざる得ない状態になります。

とまあこのような理由があり、映画館側である程度、上映する音量を決めていきます。

 

この説明した3つを行なっているのが「試写テスト」となります。
映画をお客様に届けるまでには、製作側だけではなく届ける側も一緒にいろいろな仕込み作業をしていき、やっと届く形になります。ちょっとでも多く楽しんでもらいたいからね!

なので是非、みなさん映画館に来てください。

 

余談

さて、ちょっと余談なのですが、なぜ映画の音量が基準値といわれる音量でやりにくいかを、少し考察していこうと思います。まだ続くけど、映写の仕事関係ないです。

僕の独り言みたいな物なのでちょっと難しい言葉も入れていきます。

あとちょっと口が悪いし殴り書き

そもそもとして、同じ基準値の音量で流せないのは単純にスタジオと映画館の環境が全く違うのが原因です。
音は空気を複雑に伝う物理現象なので、部屋の環境やオーディオシステムが違えば数値上は一緒のように見えても全く変わります。

そして主に日本で作られた作品にスタジオと映画館の違いは顕著にでます。洋画はあまりブレがありません。それは何故かも一緒に考えて行きます。

まず映画館側ですが、そもそもBチェーンがお座成りで、箱のf特がしっかり出せてないのと、各スピーカーレベルが合っていない。という映画館もいっぱいあります。
お恥ずかしいですが、僕の映画館も結構ずれてる事もあります。

次にスタジオ側の話ですが、定期的にメンテナンスを入れていると仮定して、問題は箱の小ささです。多分日本で一番大きな映画用のスタジオを見せてもらいましたが頑張って150席ぐらいの劇場かなというぐらいの大きさです。試写室も映画館のメインスクリーンほどの大きさはありません。あとリファレンスのような箱の作りの様で、結構スタジオ事に癖が強くて違います。
海外、映画音響の最高峰であるスカイウォーカーサウンドのスタジオの話ですが、多分スタジオはあんま変わらない大きさなのですが、試写室とかはめちゃくちゃ大きいです。しかも一部の拘り以外は何処の部屋も時代の最新設備です。スタジオも完全に時代の最前線の音が作れるシステムです。資本の違いを感じます。スタジオであり、最前線の映画館環境も併せ持っているので、そりゃあブレないっすね。ちなみに僕の基準の音はスカイウォーカーで聴いた音になっています。

 

あと映画館もスタジオもですが、日本と海外ではBチェーンでの音の作られ方が全く違います。
世界基準だから一緒なはずなんですが、全然違います。日本のスタジオと映画館は良くも悪くもMidLow以下が弱いです。というかちゃんと再生されてない。
すっきりした音にしたいのかは分かりませんが、Midから上で音圧を稼ぐような作り方を感じます。スピーカーの問題かもしれませんが。
邦画がリファレンス値そのままで殆ど流せない理由はそこだと思います。映画館の大空間で上映すると痛い音だけ更に痛くなってしまうので。ていうかスタジオで聴いても音が痛え。
たぶん測定値上は綺麗なので、調整ではなくスピーカーの再生能力な気がしていますが。下のユニットが上の再生に追いついてない音。
まああと何が原因か分からないけど録音が不自然に上よりの音すぎるのもあると思う。声とか声とか声が。

 

僕の映画館で自分で作った音を聴いた制作の人の感想で「Lowが出すぎ、私の作ったこの映画はこんなLow入ってないよ」っていうの何度か聞きました。

ちげえよ、入ってないモンは再生できねえんだよとキレそうになりましたが、スタジオが狭いので実際に広い場所でのLowの広がり加減やモニタースピーカーの再生能力が追い付いてないだけです。あまり文句いうと箱のf特測定値と残響の収束測定の結果とスピーカーのフェイズ特性のデータ全て投げつけんぞって思いました。僕のとこも完璧な音場ではないですがそれはちょっと原因が違うので。

あとあれ、クリアな音を勘違いしてない?って思う事があります。Hiだけがスコーンと通ればクリアとか思ってない?基音の事考えてそれ作ってる???って思う事があります。しまった、文句ばかりが出てきてしまった。。。いや僕らも悪いとこはあるよ!

 

次によくある基準値を作るためのメインSP85dBとサラウンド82dBとかの音圧のバランスですが、下のEQ画面を見てください。

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意図的に200Hzと1KHzを盛り上げました。そしてEQで盛り上がった分(EQの+dBとSPL実測のはイコールではない)フェーダー下げればこの二つはこれでピンクノイズを出してEQフラットの時でフェーダー0dBと同じ85dBで再生されてしまいます。(このEQはXカーブを調整している画面ではありません)

何が言いたいかというと、Bチェーンで作られたXカーブに伴ったf特の周波数ごとに1dB2dBは当たり前に上下します。200Hzで-2dBで2kHzで+2dBだったら4dBの差が出ます。そのため本当に全く誤差がない一緒のf特と騒音測定器でなければピンクノイズでの音圧測定なんて参考にはなれどアテにならないんです。

それにピンクノイズなので、Q値が狭くピンポイントでピークやディップができてる帯域なんてそもそも音圧測定にほとんど反映されません。まあだからある程度近似値がとれるというのもありますが。

その上で映画館のXカーブでコヒーレントをみている映画館なんてほとんどありません。測定上は綺麗なカーブを描いていても、箱の問題でどこかの帯域でおきてる環境由来のピークやディップなんぞそもそも考えてやってるとこなんてほとんどありません。

恐らく日本のスタジオも今までいろいろ音を聞いてきた感じでは同じでしょう。

もうスタジオと映画館が完全に一致できる要素がまったくねえっす。だから映写スタッフとかで最終的な帳尻あわせないといけないのよとおもっています。イレギュラーな特殊な音響調整はしらんけど、僕の理想はやっぱり作り手の音をちゃんと届けたいなのでスタジオ側も勉強しているのですが、知れば知るほど難しいです。


あまり知識がなく表面的にしか考えられない僕ではこのくらい絶望感があるんですが、音響のプロだったら何とかできるんでしょうか。

 

映画館もちゃんとしなきゃですが、スタジオ側ももっと見直してお互いに補いながら映画を届けたいですね。だから僕は手を取り合いたい、

 

映写技師が考える上映品質が高い映画館とは

こんにちは、今回は映写の僕が考える、こいう映画館は上映の品質が高いよねっていう話をしていこうと思います。

発端はコレ

 

このツイートで書いてみようと思いました。
※ツイートの貼り付けが問題ありましたらツイッターの方でご連絡ください。

 

しかし、あれです、ここ映画館がいいよって名指しで言うのは難しいので、「こいう映画館はいい映画館だよ」というスタンスで行きます。
というか、あまり他の映画館いかないので良く知らないんですよネ

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前回みたいなマニアックな記事にならないように書いていきたいと思います。


分かりやすく上映品質の高い映画館

まず、誰もが一目でわかりやすい、高水準の劇場があります。
ドルビーシネマです。このドルビーシネマのスクリーンがあれば大きくハズれる事は無いです。

www.dolby.com

なぜ、ドルビーシネマが高水準なのかというと、このドルビーシネマはとても厳しい規格と基準で、画と音の両方を映画館設備や規格での世界のトップであるドルビーラボラトリーズが全てコントロールして作られる劇場だからです。THXがやっていた事よりもさらに厳しい感じだったはず。

あと画に関しては独自のドルビービジョンという、いやもうめっちゃすげー綺麗な画(語彙力ェ...)の機材を使用しています。ただコンテンツもドルビービジョン対応である必要があるのですが、非対応でもコンテンツ以外の基準がドルビービジョンを名乗るためには、設備をかなり高水準にしなければいけないので、非対応作品でも綺麗です。

音に関していえば、絶対ドルビーアトモスの設備をいれないといけないので、ドルビーアトモスだから音が良いはイコールにはなりませんが、ドルビーアトモスはその音場を作るのがきっちりシミュレートしないといけない都合上、ある程度信用できます。

ただ日本のドルビーシネマってSLSってメーカーのスピーカー使ってる事が多いのですが、このSLSがあんまりいい音じゃないのがたまに残念なんですよね。
海外の大手チェーンのAMCが使ってるようなQSCというメーカーのカスタムスピーカーはめちゃくちゃいい音がしました。ただSLSは安い。

ドルビーは自分でSLS売ってますが、ドルビーアトモスを入れさせたいためだけなのか、ミドルクラス以下のブランドと本人たちが言ってるそうですよ。
まあ彼らの本社の試写室、MeyerSoundのスピーカーで自分たちで使ってないところからしてもちょっと察する事が出来ます。
同じ用途で同じぐらいのサイズのスピーカーどうしで比べると、値段がたしか10倍ぐらい違うのでドルビーさんもきっと本社の一番大事な試写室は本気なんでしょう。Meyerは本当に高いんです。えぇ...

と、ネガティブな要素も書きましたが、基本的にはドルビーシネマのスクリーンは画と音がどこも平均点数高めで信用できると思います。

 

日本で有名なドルシネのような存在としてIMAXがあると思います。
このIMAXも基本的な思想は素晴らしく、良い劇場であるはずなのですが、あまりにも乱立され過ぎたせいか、クオリティが劇場によってピンキリな事が多いため一概にIMAXだから良いと勧められないと個人的には思っています。

実際、僕も関西や関東合わせて何度かIMAXを見に行ってますが、良いところは凄く良いだったんですが、ダメだろこれ…ってのも多数あり、IMAXだから良いとは言えないなと言うのが僕の考えです。

 

上映品質が高い映画館を考える

じゃあ、ドルシネ以外での上映品質の高い劇場を解説していきたいと思います。
まず、何はともあれ、「人」です。どんな素晴らしいシステムが入っていても、それをしっかり扱う人が居ないと意味がありません。

一般人がF1に乗ってもまともに走れないというか、下手したら市販車を運転した方が速く走れるのと一緒です。

基本的に独自だったりすっごいシステムって、運用が難しくて、手放しに出来ないものです。手放しで誰でも出来るよって運用しちゃっているところは、だいたいそのシステムの良い所を使えていません。宝の持ち腐れです。

凄いシステムが入ってなくても、映写スタッフや支配人等でもちゃんとした映写を分かっているスタッフがいるところは今あるシステムをしっかり使える人達なので必然と上映品質が高くなります。

 

もう一つ、「人」が絡む話ですが、それはその劇場の施工業者の話です。
餅は餅屋じゃないですが、施工業者は大事です。変な所に頼むと映画館としての全体的な品質が低下します。

個人的に建物は日本音響やSONAが担当してて、映画館機材の施工をヒビノやジーベックスがしているところは、間違いないかなとおもいます。

施工業者自体は基本的に一般のお客さんは分からないので、調べにくいですが、大きな案件だと各業者のホームページだったり映画館のインフォメーションに載ってたりする事があるので調べてみると出てくるかもしれません。

この二つの「人」がちゃんとした映画館は基礎値が高く、上映品質がよくなります。

 

余談ですが、「分かっている」映写がいる劇場の見極めの一つとして、映写機ランプの交換サイクルがあると思います。最近流行りのレーザープロジェクターは除外されてしまいますが、品質を考えるうえでランプの使用時間や状態をしっかり管理して、メーカー推奨の交換時間以内に交換をしてメンテナンスをしている劇場はしっかりしていると思います。
フリッカーという蛍光灯のような画面のちらつきや、黒味かかった暗さな映像の場合はそこを怠っている可能性が高いです。

ランニングコストを重視している劇場の場合、推奨の交換時間をオーバーして使ったりしている映画館もあり、さらにはその交換時間を伸ばそうと、ランプパワーを凄く下げて、暗い映像で流している映画館もあります。あと映写窓も綺麗かどうかも一つの基準ですかね。

音は外から観て分かりにくいです。

設備的な上映品質を考える

次に、設備での上映品質を考えます。これは好みの視点ではなく、理屈的に組み上げて、上映環境として理想の設備を考えたいと思います。

 

画の品質を考える

1、スクリーン生地はなるだけホワイトに近い物。

まあスクリーンはホワイトに近い方がいいです。シルバーも悪くはないですが、最終的な詰めで、色味が正確じゃなくなるのでホワイトやパールホワイトなどがオススメです。ただし、最近はシルバーでもとてもいい発色をするスクリーンもあるのでこれはそのうちどっちでもいいかもとなるかもしれない。

 

2、なるべくフラットに近いスクリーンの形で壁から壁に届くスクリーンが良い。

単純に画はある程度大きい方が後ろの席でも一律で楽しめるので良いと思います。大きすぎると前の方でしんどいですが…そして壁から壁のスクリーンというは音にもかかわってきます。音の品質を考える1、の項目で説明します。

フラットスクリーンが良い理由はこちらの記事で説明しています。

 

achamiya.hatenablog.com

 

3、場内の内装が単色で統一されていて、あんまり反射しない色。

これかなり大事でカラフルな内装はデザイン的に面白くてカワイイですが、画を観るという点ではただ邪魔にしかなりませんし、反射された色がついた光がスクリーンに映りこみ、映像品質もさがります。

 

4、足元を照らす足下灯などの場内灯が弱いか工夫されている

消防法やいろんなお客さんの安全を守るうえで上映中も消せない光というのがあります。この光がオレンジ色だったり、緑色だったりするする場合、どうしてもスクリーンがその色を拾ってしまうのでちょっと色味が変化します。
この光自体はキャリブレーション中も消せない事が多いので、キャリブレーションも理想値に届きにくくなります。なので色が入っているよりは白のライトの方がまだいいかな?と体感ですが。あとは光量や床の反射を抑える工夫がされているかです。

 

だいたいこの4つが分かりやすい品質に結びつく要因かなとおもいます。

 

音の品質を考える

1、スピーカーが表に出ていない。

これは映像品質にも影響します。映像品質を考えるの2、の項目で触れた、壁から壁のスクリーンが良いの話に関わってきます。
単純に、光の反射物が増えるので良くないというのが映像品質に関わる理由ですが、音の理由が大きく二つあると考えています。

 

まず音の質感が飛び出ているスピーカーだけ変わってしまう。というデメリットがあります。映画館の音響システムはセンターチャンネルという、スクリーンの真ん中の裏にスピーカーが存在します。
※ミニシアターなどではスクリーンの下に置いてる場合もあります

なので、何が何でもセンタースピーカーはスクリーンを通した音になります。
音の透過率がどんなに高いスクリーンでも透過する以外にも音の反射が生まれるので多少なりとも変化は絶対します。

しかし、レフト、ライトスピーカーが丸だしだったりする場合、センターだけその変化がおき、両サイドになるレフト、ライトスピーカーはそのスクリーンによる音の変化をしない事になります。

最近の映画は音があっちこっちに動くので、求められる条件の一つにどのスピーカーも同じ条件で音を出すのが理想になります。特に一番耳につくメインスピーカーの3つなのでここの音の違いは良くありません。

そのため、壁から壁にスクリーンを貼ってしまえば、全部スクリーンの裏に収まるので解決というちょっと乱暴な考えです。

その延長で、サラウンドもサラウンドの前にメインのスクリーンと同じスクリーン生地を貼って壁の中に埋めちゃっているサラウンドが個人的には理想だなと思います。

 

2、音響システムが新しい

身も蓋もない話ですが、ぶっちゃけコレだとおもいます。

何故なら、35mmフィルム時代に求められていた映画館の音響システムと現在求められている音響システムではもう別物のレベルで違います。
私の映画館も旧来のシステムのスクリーンがありますが、スペック的にも音的にもとても良いスクリーンです。しかし最近の映画を掛けるとなると、いろいろ足りないというか機材への負担が凄まじいです。

リファレンスといわれる音量で上映する時にはサラウンドとSWに関してはもう壊れない事を祈るか、保護の目的で音量を下げたり、音に電気的にフィルターと言われるものをかけたりするしかないです。メインスピーカーも実は何度も壊れています。ただこれはウチだけに限った話ではなく全国区の話です。

実際にTENETやダンケルクといった悪魔の所業と言っても過言ではないようなサウンドデザインをしてくる某監督の作品の時には全国でいろんな劇場が大変な事になったそうです。

そもそも音響システムの許容できる以上の音が突っ込まれると、音が歪んだりして綺麗に鳴らせないので、だったら音量下げるよ…っていう悪循環にもなります。

 

音的にぱっと考えられる要素はこの二つでしょうか。

いや、音が良い最大の要素に劇場の建築があるんですが、これは説明も難しければ理想的な環境を構築するのは非現実的なところもあるので、今は省きました。

細かく言えば画も音ももっといっぱいあるのですが、それ以上は本当に深淵の領域なので、飲みの席で語りましょう(?)

 

長くなりましたが、ではまた。

 

 

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映写的にも『燃えよ剣』がオススメだよ。

moeyoken-movie.com

こんにちは、今回は久々に映画のレビューというかオススメを書こうかなと思います。
岡田准一主演の『燃えよ剣』です。

 

もちろん、映写的な視点でのオススメです。

 

燃えよ剣』のサウンドデザイン

この『燃えよ剣』、邦画と侮るなかれ、かなり良い音をしています。
録音が良いんだと思います。個人的に最も良かったのはサウンドエフェクトよりもセリフの録音の良さを感じました。

それにサラウンドの使い方がとても良く出来ていて、足し算と引き算のバランスがかなりいいと思います。

足し算と引き算ってのは、僕が今まで見てきた映画を総合して考察した時に個人的なデザインの指標の一つにしているモノで、使う音と使わない音をしっかり間引いてるというのでしょうか、イラストで言うと、拡大するとちょっと雑だけど引いてみるとめちゃくちゃ綺麗なイラストって超技術が必要なんですが、そんな感じ。

音の重心が低い

もう一つ、僕がとても大事にしている音の良し悪しの一つに音の重心という考え方があります。
邦画や日本のアニメでとても多いのですが、音の重心が基本的にみんな高いです。
平たく言うと、高域よりの音で中域がスカスカなニュアンスです。


ただこれ、低すぎてもダメで、ちょうどいい塩梅ってのがあります。ちょうどいいというのはリアルの音の重心に近いが個人的な指標です。
まあ再生システムが変わるとある程度左右されてしまうんですが、重心自体の本質は変わらないと思っています。

邦画やアニメはひたすら重心が高いか、下半身太りのように150Hz以下ぐらいがただただ暴れてしまうような重心の二極が多いです。

そんな中、この『燃えよ剣』はとても良いバランスの重心を持っている声の録音をしてあって、音楽やSEなんかも良い感じの重心です。

岡田君の声がとても綺麗に聞こえます。

 

気になるところもあるよ

唯一ちょっと気になったのが、刀と刀のぶつかるときの音ですかね。なんかそれだけちょっとチープな感じ。

 

画も綺麗

音も良いですが、画も綺麗です。画郭もシネマスコープなのでとても映画!って感じで好きです。いやビスタが嫌いなわけではないのですが、ちょっと古参厨みたいなものがあって、今はビスタの方が大画面になる場合が多いですが、大画面と言えばシネマスコープサイズな気持ちが強いんです。


大画面でちょっとワイルドで土臭い土方な岡田君のイケメンフェイスが堪能できます。いや本当にカッコイイなこの人。
そして、なんだ日本は山田って苗字はイケメンしかいないのかって思うほど山田涼介と山田裕貴も美しいです。他のキャストも超豪華ですし、これは劇場のスクリーンで見るべきでは。

映画館の音響セッティングをしてみた。

こんにちは。ブログのペースが一ヶ月に一回ぐらいになってしまっていますね。

 

さて、今回はだいぶ前に書いたこのブログ

achamiya.hatenablog.com

このソフトウェア編を兼ねています。

CP650を使って映画館の音響セッティングを自分でしてみたので、それをブログにしてみようと思います。

 

映画館の音響セッティング

そも、映画館の音響セッティングとは何ぞやという話です。

基本的に音響セッティング、音響調整というモノになるのですが、それをBチェーンと言います。もちろんAチェーンもありますが、基本的にはこのBチェーンの事を音響調整と呼んでいます。

Bチェーンとは、スピーカーから出る音を基準値内に調整していく作業です。
この基準値は映画館の世界基準で決められており、ポスプロ側も映画を作るスタジオはこの基準で作られています。

つまり制作された音はこのBチェーンで基準値内におさめ、大よそ同じ環境とすれば、製作者の意図した音を流せるという理屈です。

まあ人間の耳は賢いのでそんなうまく行かないんですがね。。。

そして、基本的にこれらの音響セッティングはインストーラー業者様たちの施工案件であり、僕みたいな映写技師は見学はすれど、自分でやる事はあまりしません。

諸々の事情もあったのですが、ちょっとプロの仕事を勉強しようと思い面白そうだから自分でやってみました。

突貫工事ですので本職からすると甘いなとか、抜けてるところもあると思いますが、まあ形になったからいいかなって。

 

Bチェーンをやっていく

さて、Bチェーンをやっていくにあたり、CP650でやるBチェーンは何をするのかという内容です。マニュアル読むのめんどくさかったので雑ですが

1)各chの音量を決める(SW以外)
2)サラウンドディレイを入れる
3)各chのf特を調整する
4)再度各ch音量を微調整する(SWここでやる)

となります。
多分順番的にこの順番でやらないとダメだろうと思った結果こうしました。
最初にf特じゃだめなん?って話ですが、古かったりポンコツなシステムとかだと音量の増減でf特が変化する事があります。そして今回のスクリーンは古いシステムなので、先に音量を決めて、f特を調整します。
で、f特を調整するとピークが変わって音圧の測定値が微妙に変わるので、最後に微調整を挟む

という段取りにしました。
あれ?コレダケ?ってなったんですが、他に出来る事なさそうだしなこの子...


各チャンネルの音量レベルとサラウンドディレイを決める

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CP650をPCに接続してCP650のアプリを起動します。起動音がDolbyトレーラーで流れるロゴの時のあの音なのでちょっとテンションがあがります。


650とシンクロしたらRoomLevelsのタグで全体のスピーカーの音量を設定します。

他のタブもインストールに使用するのですが35mmのサウンドリーダーとかの感度設定とかなので今回は割愛します。

 

マイク立ててれば上の方にあるinternalSPL Meterでオートで最初だけ合わせれば決めてくれるようです。僕は最初オートに頼らずとりあえず人力でやってみたいタイプなので人力で全てのスピーカーをCバンド騒音計で測りながら合わせて行きました。今回マイクを後述の理由で繋げていなく作業当初しらなかったとか言えない

LCR85dBサラウンド82dBです。SWも無知ゆえにここで合わせちゃったのですが、ちょっと後述。

 

次にサラウンドディレイを決めます。

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CP650だと、サラウンドだけディレイが付けられます。あれ、たしか850は全部のチャンネルディレイ操作できたと思うんやけど、、、と。

仕方ないと思いますが、時代的に位相やらを視るという事をしていた時代ではないので、距離にかかるディレイだけみてあとは建築のレイアウトでしっかり合わせろよって事なんだと思います。まあ電気的介入は少ない方がいいからね。

 

そしてこれ、計算して手打ちが一番正確だと思うんですが、Opticalとdigitalが何なのかよくわからなかった(マニュアルを読め)のでオートでやってもらいました。
たぶん、アウトプット信号と機器による遅延を考慮した差異なんでしょうが。

しかしこのオート、feetとmでしかも整数しか入らないので、mの場合cm単位の刻みができません。この数字は試しに入れた数字ですが、実際は劇場(スピーカーの距離)の寸法を測って入れてます。

なのだけど、メートルだと微妙にずれすぎる。。。feetの方が数字が違いのでfeetに換算していれました。だいたい正確にできました。

 

Xカーブを作る

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レベルとサラウンドディレイをきめたら、みんな大好きアカデミックカーブもとい、Xカーブを作ってみます。

SMPTEの資料よむとXカーブの理想は距離減衰とかの自然的な減衰だけを利用して作り出すカーブっぽいのですが、そんなの普通の箱で無理なので電気的処理します。

本来はこの黒いRTA画面にf特が表示されるのですが、僕はここでやらかして、外部のRTAを用意しました。

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家からsmaart持って来てそっちで計測しました。
というかCP650のRTAよりちゃんと測れるのではという気持ちもありましたが、ファンタム電源の取り方知らなかったんです(え
あとで聴いたらちゃんとファンタムできました。


SmaartのRTAでのf特をCP650のアプリ上のXカーブの線になんかそれっぽく合わせます。CP650にマイクをアサインしていればかなり楽だと思います。

普段、グライコって使わないのでちょっと苦戦しました。というかこいう調整ならパライコの方が絶対的に有利だと思うんだけど。あと年式的にIIRな気がするのであまり大きな変化付けたくないですね。FIRだとマシンスペック的に絶対遅延が酷い事になると思う。

 

再度、各chのレベルを調整する

Xカーブを決めたら、再度騒音計でレベルの微調整をします。
やっぱ若干上下しましたね。f特も見ながら微調整します。一応。

そしてSWですが、ここにきて調整します。
SWって規定は89dBって教わっていたのですが、どうもちょっと違うようです。
いやすげー喋りたいんで、オープンソースなのかなと調べたんですが、有料のSMPTEの資料しかでてこなかったのでちょっと伏せます。

単純に音圧で覚えてはいけないようです。

 

作品を流して確認する

全ての調整が終わったら、フルスペック(この場合5.1ch)の映画コンテンツの作品を流して確認します。
実際流すとやっぱ、RTA上は綺麗なんだけど、音になってねえなとかそいう不都合が見つかります。今回も例にもれず何度かやり直しました。
インストーラーの人たちと違って僕らは映画館の中の人なので、いろんなタイプの作品でチェックできるのは大きいと思います。

納得したら終了です。


感想

一通りやってみた感想です。

CP650だけで全部やるのは良くない。って思いました。
いやチェーン店レベルの平均点は簡単にだせるのですが、それ以上は出せないって感じですね。CP650の後にDSPを噛ませて、細かい調整はそのDSPにやらせた方が現代は良さそう。
そもそももうCP650はサポートも終了しているのでフィルム上映をしなければいけないという理由でない限りは使う必要ないなって思います。

ただ、古きを知りみたいな気持ちでやってみると、なるほどなーと発見が多かったです。

今はもうf特だけみてシステムチューニングをするというのは個人的にナンセンスだと思っています。デュアルチャンネルのFFT測定ができるのだから、f特と位相を観ながらしっかりシステムチューニングしたいですね。
あまりほかのプロセッサーは知りませんがDTSのAP20とかTRINNOVのOvationはもっと専門的に設定できるので、今なら選択肢としてアリですね。

後どんなに機械的にやってもうまく行かないので、結局、最後は人間の耳だと思いました。インストールした業者や人で音が全然違うのはそいうのもあると思います。

あとXカーブってもういらなくない?????
だってこれただデチューンしてるだけじゃん。

って思いました。折角良いスピーカー使っても上も下も削ってどうすんのって。

劇場のセッティングって奥が深くて面白いですね。


プロジェクターの映像を拘る時の優先順位とは?

こんにちは、今回はちょっと簡単な雑談的な気持ちでブログを書こうと思います。

 

それはそうとツイッターを始めました。というか復活しました?

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もし良ければフォローしてください。独り言とブログのPR的な事がメインです。

 

では本題ですが、そもそも映画館での映像のクオリティを上げていくには何から拘った方が良いのかっという事を少し考えていました。たぶんホームシアターでも共通するような気がします。たぶん。

 

個人的なPJ映写クオリティの影響度ランキング

 PJ(プロジェクター)の映写で、映像のクオリティに影響するランキングです。

そのまま拘るときの優先順位とも合致しています。

 

1、スクリーン

2、映写環境

3、ランプ

4、プロジェクター

 

 かなと個人的には思います。多分人によりけりだとは思うのですが、経験上こうなりました。

 

では1から説明していこうと思います。

 

スクリーン

いやもう、文句なしに一番拘るべきなのはスクリーンだと思います。

アバウトですが、体感での映像クオリティの影響割合はスクリーン7割、映写環境2割、PJ1割です。

何故かというのを経験を踏まえて説明します。

私はハークネス、山星組、スクリーン設備、スチュワートというメーカーたちを使った事があります。

PJは共通です。どのメーカーも悪いメーカーではありませんでしたが、スチュワートに変えたときの映像の綺麗さといったらそれはもう、とてつもない衝撃でした。

 

他の同じPJを使っている映画館に行ったときも、SXRDはもっと頑張れる子だぞと思うほどに画質に差がでます。

スクリーンスペックの数値上は他と変わらないはずなのですが、スチュワートの謎技術のようなものが凄いのです。

スクリーン自体は他のメーカーより高いですが、後述のPJの欄で説明しますがコスパ最強です。

 

スチュワート以外にも高級な高スペックなスクリーンメーカーはあるので、映像クオリティを上げたい場合はスクリーンを吟味してまずそこにお金をかけるのが良いと思います。

 

映写環境

次に来るのは、映写環境だと思います。

映写環境とはいろんな事を指していますが、私の中では映写角度と距離、壁の反射や迷光の度合い、レンズの種類、スクリーンのタイプが主に考えてる内容ですね。

 

映写角度と映写距離は何方も数字が浅い方が強いです。まあ距離については近すぎても難しいですが、概ね角度が縦横につけばつくほど映像が歪み、距離が長くなればなるほど色味や輪郭のシャッキリ感が薄くなります。

あと結構知られていないのですが、デジタルシネマのPJは台形補正とか映像を補正する機能は一切ついていません。

SMPTEだかDCIだかでしちゃだめよって言われています。

なので理想はやはり左右と上下0度で入射して、距離はレンズの適正距離での映写が理想ではないかなと思います。でも建築上なかなか難しいのが現実です。

 

次に壁の反射や迷光というものですが、

映画館は商業施設なため、消防法が厳しくついて回ります。それにお客様の安全を考慮しないといけないので、足元の足下灯等が絶対に存在します。

なので暗い場内ではありますが、結構よく見るといろんなところに明かりが存在します。暗い中の明かりってとっても目立ち、なおかつスクリーンが結構びっくりするぐらい反射してしまうので、発色性に影響してしまいます。この辺りをよく考えて作られた劇場はかなりのポテンシャルだと思います。

壁も光を反射します。スクリーンが反射した光を壁が反射してスクリーンの映像に再度もどって影響してしまう事もあります。というか、そもそも観てて壁が反射してたらちょっと気になるし見づらいですよね。

 

次にレンズの種類ですが、映画館の映写機のレンズは何種類かに分かれています。

大きく分けると単眼と二眼というくくりがあります。単眼はレンズ一本なのですが、二眼はレンズが二本ついていて、映像を重ねてだしています。

主にこの二眼は3D用のレンズです。2Dでの上映では足かせにしかなりません。

何故なら二つの映像が共存してしまうので、どんな頑張っても若干ぼやけます。

割と密着して設置されていますが、数cmでもレンズの芯がずれているのは大事です。

 

最後にスクリーンのタイプですが、フラットかカーブドかってタイプですね。まあフラットか適度なカーブドが良いと思います。過度なカーブはただの害悪。

 

ランプ

次にランプなのですが、レーザーはちょっとわからないのでキセノンランプでの話。

運用コストが許すなら適正から一回り大きな球でパワー抑えめで運用するのが一番いいように思います。これは明確なロジカルがあるわけではなく感覚なので、どうしてとは言えないのですが、、、

ただ安定してみるならランプは2kW球の小さい球が一番安定性が高いです。大きい球は美味しい時間が短すぎる。。。

私は2k~4kを使用していますが、4kは使用時間が700時間しか使えないのでランニングコストはべらぼーに上がります。正直辛い。

 

プロジェクター

多分みなさん意外だと思うと思いますが、プロジェクターの優先度は低いです。

ここはコンシューマー機と違うかもしれませんね。

これはレーザーでもキセノンでも変わりません。

プロジェクターを拘るのは、もうやる事やったしあとちょっと95%を100%にしたいっていうぐらいの時だと思います。

何故なら、DLPはTI社のチップをそのまましか使えないので各社プロジェクター自体の差はそんな出ません。SXRDも同様にLCOSチップなのでSXRDどうしの差ってあまりありません。

DLPが好きかSXRDが好きかで決めていいと思います。

 

じゃあレーザーとキセノンは?っていう話ですが、スペックルノイズ?でしたっけごめんなさい、ちょっとノイズの名前がうろ覚えですが、それとランプの揺らめきが酷くない限り、ほとんどの人は見わけつきません。僕もある映画館に行ったときに言われるまでレーザーだって気付きませんでした。

 

なのでスクリーンの時に後述すると言った部分ですが、値段が倍するRGBレーザー買うより、キセノンでもちゃんとしたプロジェクターを買って、その差額でしっかりしたスクリーン買った方がいいです。例えば予算が3600万だったとしたらRGBレーザーの高いやつだと3500万ぐらいするらしいので100万でスクリーンを用意しないといけません。

でも、キセノンのプロジェクターならどんな高くても2000万ぐらいで買えるので極端な話、1000万をスクリーンにかけても600万あまります。600万で他の事ができます。

そしてRGBレーザーとキセノンを見比べたときより、費用対効果が全然良いです。

 

とまあこんな感じです。

ただあくまでも私の実体験に準ずる考えなので、「いやいやこうだよ」という方もいると思います。まあ何か参考になればなと思います。

 

ではまた。