映写雑記

映画館の設備視点

35mmフィルムの音を読み取るえらい子を紹介するよ

 こんにちは、ちょっと間が空いてしまいましたが、まったりマイペースに更新していきます。

 

今回は、フィルム上映で音を読み取る機械をみて行きたいと思います。

今回の犠牲者さんはDolby Digital soundhead Cat.No.702という子になります。

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Cat702

倉庫にほっぽってあった子です。ほっぽってあったのでちょっと汚いのは許して。

 

ではさっそくバラバラにしていきます。

 

フィルムで映画の音を読み取る

まずもって、最初に説明しなければいけない事があります。

それはフィルム上映の音はどこに記録されているのかという事です。

至る所で説明されているので、知っているよという人は飛ばしてください。

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写真は本物の35mmフィルムです。汚いのは使用用途のせいなので、本来はもっときれいだよ。上映で使われない部分です。

左側に注目してもらうと、パーフォレーションというフィルムの穴の間にQRコードみたいなざらざらしたグレーなゾーンがあるとおもいます。このグレーのゾーンに今回メインとなる音声データが焼かれています。AC3というドルビーデジタルサウンドのデータです。私の現場ではSRDという通称で呼んでいます。

その右側にある青色の帯の部分は光学トラックというものでアナログサウンドデータが印刷されています。

 

デジタルサウンドヘッドはこのグレーの部分を読み取る機械です。

青いろの光学トラックを読み取るアナログサウンドヘッドというのも映写機の中にあり、別々に存在します。

 

サウンドヘッドをバラしていきます

さて、観察しながらバラしていこうと思います。

ちなみにフィルムはこうやってかかります。

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右上にかけ方の図のシールが張ってありますのでその通りにかけます。上からフィルムが入って来て、下に抜ける方向です。

※卓上でテンションがかけれないので、最後のローラー付近のフィルムが浮いちゃっていて、導線が分かりにくくなっています、すみません。

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このツルツルのロードローラーのようなローラーの横についているのがLEDで、対向にレンズがついています。先ほどのフィルムのグレーの部分をLEDに充てて読み取っている感じです。

 

一応インストールするときにこのLEDの位置調整があり、この調整が甘いと上手く読み取れません。あとレンズは割とデリケートなのでよく掃除をします。

フィルムって結構、削り粉とかが出る場合があって、その削り粉とかホコリがレンズやLEDにくっついてしまい読み取り不良を起こす事があります。

この辺はアナログの弊害ですね。

あとこのローラーに異物がくっついているとフィルムに縦傷ヴあああああってついちゃうので清掃とチェックもだいぶ入念におこないます。

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このC型の金具はギザギザのスプロケットローラーの上と下についているフィルムのストッパーを抑えるための金具なのですが、たまに割れるんですよね。ちょっとめんどくさい。

 

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見比べないと分かりにくいですが、ストッパーがこんな風に開きます。フィルムを通してる写真と比べてみると分かりやすいかも。

 

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レンズユニットの側面です。冷却用の穴のスキマから読み取りレベルを教えてくれるLEDがみえて、緑色と赤色に光ります。緑色だと良好で赤色だと読み取りレベルが低下している証拠です。

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開けるとこんな感じ。

青いろの四角い箱がダイヤルになっていて、マイナスドライバーとかを突っ込んでカチカチと回すと読み取りの感度調整ができます。

読み取り感度は前の記事にしたCP650のソフトウェア面で観ながら調整します。たまに勘でやっちゃいますけど。エラーレート下がればいいんだよ!(暴論

 

下側の白い端子に電源やらCP650の接続やらのケーブルが刺さります。

 

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裏側を観て行きます。

ネジで止まっているだけなので、簡単に外れます。

 

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外すと基板と、なんて言うんでしたっけ、カウンターウェイトみたいなローラーが入っています。デジタルサウンドヘッドの重量の大半がこいつです。

さっきでてきたロードローラーみたいなつるつるしたローラーの軸についているのですが、一定の速度で回すためのウェイトだと思います。

 

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外すと何やら右側にエンジンのシリンダーとピストンみたいなものがでてきました。

機構自体は表のフィルムストッパーに繋がっていて、簡単に跳ね上がったりしないようなダンパーの役割をしているんだと思いますが、別にこんな複雑にしなくてもよかったのでは、、、

このウェイトがはまっていた軸にボールベアリングが圧入されていますね。

表側と裏側の二つで軸を支えています。

 

表側のベアリングは油さしたり、掃除したりできますが、裏側はここまでばらさないとできないので、やはり回すとかすかにゴロゴロいっています。一日中365日、結構高速で回っているので負担も大きいと思います。荷重はかからないので発熱とかはなさそうですが。

 

油をさして馴染ませておきます。音が消えました。

軸もウエイトがボルト貫通で固定する方式で、空回りしないため、錆止めのつもりでちょっと油を付けたウエスで拭っておきました。

 

今度はまた表に戻ります。

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表のスプロケットローラーです。このローラーもボールベアリングが両端に圧入されています。やはり、バラさないと油がさせないのと清掃ができないのでボディ側は汚れており、ローラーもゴロゴロしていました。

清掃後に油をさして馴染ませて良い状態にもどりました。スプロケット本体にも少し多めに油を含ませて錆止めしておきます。使用するときに油はクリーナーで飛ばして必要量再添付すればいけるはず。たぶん。

 

こういった回転物は軸上で回転の抵抗差が激しくなるとあんまりよろしくないので、定期的に診る必要がありそうですね、、、

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この黒いローラーも例にもれずボールベアリングが両端に入っています。

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このローラー二種類あって、フィルムの捻じれやブレに対応するためか、軸上をスライドできるようにスプリングで浮いてるタイプと上記写真の様にCリングで止めてあるローラーがありますね。良く考えてありますね。

今回Cリングプライヤー持って来てなかったので外せませんでした。無理やり外してもいいんすけど、歪んでしまうので今回は諦め。

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フィルムストッパーのローラーはただのプラローラーでした。

 

何だかんだ、めちゃくちゃ清掃しました。

すべて元に戻して終わりです。

 

映写機上だとばらすのが難しいので、こういった作業は表面だけがメインになってしまいます。というか普通ばらしちゃダメです^q^

 

それと今回ははぶいてしまいましたが、各ローラーのネジに軽めのロック剤がついていたので、バラす人はロック剤もしなおさないと上映中に外れてしまうかもしれない。

 

余談ですが、私の映画館ではCat.No.700というこれより古い、LEDではなく電球タイプの光源になっているデジタルサウンドヘッドも使っています。もうちょっとごついです。機会があればそちらも紹介します。

 

ではまた。