映写雑記

映画館の設備視点

映画館の音響セッティングをしてみた。

こんにちは。ブログのペースが一ヶ月に一回ぐらいになってしまっていますね。

 

さて、今回はだいぶ前に書いたこのブログ

achamiya.hatenablog.com

このソフトウェア編を兼ねています。

CP650を使って映画館の音響セッティングを自分でしてみたので、それをブログにしてみようと思います。

 

映画館の音響セッティング

そも、映画館の音響セッティングとは何ぞやという話です。

基本的に音響セッティング、音響調整というモノになるのですが、それをBチェーンと言います。もちろんAチェーンもありますが、基本的にはこのBチェーンの事を音響調整と呼んでいます。

Bチェーンとは、スピーカーから出る音を基準値内に調整していく作業です。
この基準値は映画館の世界基準で決められており、ポスプロ側も映画を作るスタジオはこの基準で作られています。

つまり制作された音はこのBチェーンで基準値内におさめ、大よそ同じ環境とすれば、製作者の意図した音を流せるという理屈です。

まあ人間の耳は賢いのでそんなうまく行かないんですがね。。。

そして、基本的にこれらの音響セッティングはインストーラー業者様たちの施工案件であり、僕みたいな映写技師は見学はすれど、自分でやる事はあまりしません。

諸々の事情もあったのですが、ちょっとプロの仕事を勉強しようと思い面白そうだから自分でやってみました。

突貫工事ですので本職からすると甘いなとか、抜けてるところもあると思いますが、まあ形になったからいいかなって。

 

Bチェーンをやっていく

さて、Bチェーンをやっていくにあたり、CP650でやるBチェーンは何をするのかという内容です。マニュアル読むのめんどくさかったので雑ですが

1)各chの音量を決める(SW以外)
2)サラウンドディレイを入れる
3)各chのf特を調整する
4)再度各ch音量を微調整する(SWここでやる)

となります。
多分順番的にこの順番でやらないとダメだろうと思った結果こうしました。
最初にf特じゃだめなん?って話ですが、古かったりポンコツなシステムとかだと音量の増減でf特が変化する事があります。そして今回のスクリーンは古いシステムなので、先に音量を決めて、f特を調整します。
で、f特を調整するとピークが変わって音圧の測定値が微妙に変わるので、最後に微調整を挟む

という段取りにしました。
あれ?コレダケ?ってなったんですが、他に出来る事なさそうだしなこの子...


各チャンネルの音量レベルとサラウンドディレイを決める

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CP650をPCに接続してCP650のアプリを起動します。起動音がDolbyトレーラーで流れるロゴの時のあの音なのでちょっとテンションがあがります。


650とシンクロしたらRoomLevelsのタグで全体のスピーカーの音量を設定します。

他のタブもインストールに使用するのですが35mmのサウンドリーダーとかの感度設定とかなので今回は割愛します。

 

マイク立ててれば上の方にあるinternalSPL Meterでオートで最初だけ合わせれば決めてくれるようです。僕は最初オートに頼らずとりあえず人力でやってみたいタイプなので人力で全てのスピーカーをCバンド騒音計で測りながら合わせて行きました。今回マイクを後述の理由で繋げていなく作業当初しらなかったとか言えない

LCR85dBサラウンド82dBです。SWも無知ゆえにここで合わせちゃったのですが、ちょっと後述。

 

次にサラウンドディレイを決めます。

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CP650だと、サラウンドだけディレイが付けられます。あれ、たしか850は全部のチャンネルディレイ操作できたと思うんやけど、、、と。

仕方ないと思いますが、時代的に位相やらを視るという事をしていた時代ではないので、距離にかかるディレイだけみてあとは建築のレイアウトでしっかり合わせろよって事なんだと思います。まあ電気的介入は少ない方がいいからね。

 

そしてこれ、計算して手打ちが一番正確だと思うんですが、Opticalとdigitalが何なのかよくわからなかった(マニュアルを読め)のでオートでやってもらいました。
たぶん、アウトプット信号と機器による遅延を考慮した差異なんでしょうが。

しかしこのオート、feetとmでしかも整数しか入らないので、mの場合cm単位の刻みができません。この数字は試しに入れた数字ですが、実際は劇場(スピーカーの距離)の寸法を測って入れてます。

なのだけど、メートルだと微妙にずれすぎる。。。feetの方が数字が違いのでfeetに換算していれました。だいたい正確にできました。

 

Xカーブを作る

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レベルとサラウンドディレイをきめたら、みんな大好きアカデミックカーブもとい、Xカーブを作ってみます。

SMPTEの資料よむとXカーブの理想は距離減衰とかの自然的な減衰だけを利用して作り出すカーブっぽいのですが、そんなの普通の箱で無理なので電気的処理します。

本来はこの黒いRTA画面にf特が表示されるのですが、僕はここでやらかして、外部のRTAを用意しました。

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家からsmaart持って来てそっちで計測しました。
というかCP650のRTAよりちゃんと測れるのではという気持ちもありましたが、ファンタム電源の取り方知らなかったんです(え
あとで聴いたらちゃんとファンタムできました。


SmaartのRTAでのf特をCP650のアプリ上のXカーブの線になんかそれっぽく合わせます。CP650にマイクをアサインしていればかなり楽だと思います。

普段、グライコって使わないのでちょっと苦戦しました。というかこいう調整ならパライコの方が絶対的に有利だと思うんだけど。あと年式的にIIRな気がするのであまり大きな変化付けたくないですね。FIRだとマシンスペック的に絶対遅延が酷い事になると思う。

 

再度、各chのレベルを調整する

Xカーブを決めたら、再度騒音計でレベルの微調整をします。
やっぱ若干上下しましたね。f特も見ながら微調整します。一応。

そしてSWですが、ここにきて調整します。
SWって規定は89dBって教わっていたのですが、どうもちょっと違うようです。
いやすげー喋りたいんで、オープンソースなのかなと調べたんですが、有料のSMPTEの資料しかでてこなかったのでちょっと伏せます。

単純に音圧で覚えてはいけないようです。

 

作品を流して確認する

全ての調整が終わったら、フルスペック(この場合5.1ch)の映画コンテンツの作品を流して確認します。
実際流すとやっぱ、RTA上は綺麗なんだけど、音になってねえなとかそいう不都合が見つかります。今回も例にもれず何度かやり直しました。
インストーラーの人たちと違って僕らは映画館の中の人なので、いろんなタイプの作品でチェックできるのは大きいと思います。

納得したら終了です。


感想

一通りやってみた感想です。

CP650だけで全部やるのは良くない。って思いました。
いやチェーン店レベルの平均点は簡単にだせるのですが、それ以上は出せないって感じですね。CP650の後にDSPを噛ませて、細かい調整はそのDSPにやらせた方が現代は良さそう。
そもそももうCP650はサポートも終了しているのでフィルム上映をしなければいけないという理由でない限りは使う必要ないなって思います。

ただ、古きを知りみたいな気持ちでやってみると、なるほどなーと発見が多かったです。

今はもうf特だけみてシステムチューニングをするというのは個人的にナンセンスだと思っています。デュアルチャンネルのFFT測定ができるのだから、f特と位相を観ながらしっかりシステムチューニングしたいですね。
あまりほかのプロセッサーは知りませんがDTSのAP20とかTRINNOVのOvationはもっと専門的に設定できるので、今なら選択肢としてアリですね。

後どんなに機械的にやってもうまく行かないので、結局、最後は人間の耳だと思いました。インストールした業者や人で音が全然違うのはそいうのもあると思います。

あとXカーブってもういらなくない?????
だってこれただデチューンしてるだけじゃん。

って思いました。折角良いスピーカー使っても上も下も削ってどうすんのって。

劇場のセッティングって奥が深くて面白いですね。