映写雑記

映画館の設備視点

映写技師が考える上映品質が高い映画館とは

こんにちは、今回は映写の僕が考える、こいう映画館は上映の品質が高いよねっていう話をしていこうと思います。

発端はコレ

 

このツイートで書いてみようと思いました。
※ツイートの貼り付けが問題ありましたらツイッターの方でご連絡ください。

 

しかし、あれです、ここ映画館がいいよって名指しで言うのは難しいので、「こいう映画館はいい映画館だよ」というスタンスで行きます。
というか、あまり他の映画館いかないので良く知らないんですよネ

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前回みたいなマニアックな記事にならないように書いていきたいと思います。


分かりやすく上映品質の高い映画館

まず、誰もが一目でわかりやすい、高水準の劇場があります。
ドルビーシネマです。このドルビーシネマのスクリーンがあれば大きくハズれる事は無いです。

www.dolby.com

なぜ、ドルビーシネマが高水準なのかというと、このドルビーシネマはとても厳しい規格と基準で、画と音の両方を映画館設備や規格での世界のトップであるドルビーラボラトリーズが全てコントロールして作られる劇場だからです。THXがやっていた事よりもさらに厳しい感じだったはず。

あと画に関しては独自のドルビービジョンという、いやもうめっちゃすげー綺麗な画(語彙力ェ...)の機材を使用しています。ただコンテンツもドルビービジョン対応である必要があるのですが、非対応でもコンテンツ以外の基準がドルビービジョンを名乗るためには、設備をかなり高水準にしなければいけないので、非対応作品でも綺麗です。

音に関していえば、絶対ドルビーアトモスの設備をいれないといけないので、ドルビーアトモスだから音が良いはイコールにはなりませんが、ドルビーアトモスはその音場を作るのがきっちりシミュレートしないといけない都合上、ある程度信用できます。

ただ日本のドルビーシネマってSLSってメーカーのスピーカー使ってる事が多いのですが、このSLSがあんまりいい音じゃないのがたまに残念なんですよね。
海外の大手チェーンのAMCが使ってるようなQSCというメーカーのカスタムスピーカーはめちゃくちゃいい音がしました。ただSLSは安い。

ドルビーは自分でSLS売ってますが、ドルビーアトモスを入れさせたいためだけなのか、ミドルクラス以下のブランドと本人たちが言ってるそうですよ。
まあ彼らの本社の試写室、MeyerSoundのスピーカーで自分たちで使ってないところからしてもちょっと察する事が出来ます。
同じ用途で同じぐらいのサイズのスピーカーどうしで比べると、値段がたしか10倍ぐらい違うのでドルビーさんもきっと本社の一番大事な試写室は本気なんでしょう。Meyerは本当に高いんです。えぇ...

と、ネガティブな要素も書きましたが、基本的にはドルビーシネマのスクリーンは画と音がどこも平均点数高めで信用できると思います。

 

日本で有名なドルシネのような存在としてIMAXがあると思います。
このIMAXも基本的な思想は素晴らしく、良い劇場であるはずなのですが、あまりにも乱立され過ぎたせいか、クオリティが劇場によってピンキリな事が多いため一概にIMAXだから良いと勧められないと個人的には思っています。

実際、僕も関西や関東合わせて何度かIMAXを見に行ってますが、良いところは凄く良いだったんですが、ダメだろこれ…ってのも多数あり、IMAXだから良いとは言えないなと言うのが僕の考えです。

 

上映品質が高い映画館を考える

じゃあ、ドルシネ以外での上映品質の高い劇場を解説していきたいと思います。
まず、何はともあれ、「人」です。どんな素晴らしいシステムが入っていても、それをしっかり扱う人が居ないと意味がありません。

一般人がF1に乗ってもまともに走れないというか、下手したら市販車を運転した方が速く走れるのと一緒です。

基本的に独自だったりすっごいシステムって、運用が難しくて、手放しに出来ないものです。手放しで誰でも出来るよって運用しちゃっているところは、だいたいそのシステムの良い所を使えていません。宝の持ち腐れです。

凄いシステムが入ってなくても、映写スタッフや支配人等でもちゃんとした映写を分かっているスタッフがいるところは今あるシステムをしっかり使える人達なので必然と上映品質が高くなります。

 

もう一つ、「人」が絡む話ですが、それはその劇場の施工業者の話です。
餅は餅屋じゃないですが、施工業者は大事です。変な所に頼むと映画館としての全体的な品質が低下します。

個人的に建物は日本音響やSONAが担当してて、映画館機材の施工をヒビノやジーベックスがしているところは、間違いないかなとおもいます。

施工業者自体は基本的に一般のお客さんは分からないので、調べにくいですが、大きな案件だと各業者のホームページだったり映画館のインフォメーションに載ってたりする事があるので調べてみると出てくるかもしれません。

この二つの「人」がちゃんとした映画館は基礎値が高く、上映品質がよくなります。

 

余談ですが、「分かっている」映写がいる劇場の見極めの一つとして、映写機ランプの交換サイクルがあると思います。最近流行りのレーザープロジェクターは除外されてしまいますが、品質を考えるうえでランプの使用時間や状態をしっかり管理して、メーカー推奨の交換時間以内に交換をしてメンテナンスをしている劇場はしっかりしていると思います。
フリッカーという蛍光灯のような画面のちらつきや、黒味かかった暗さな映像の場合はそこを怠っている可能性が高いです。

ランニングコストを重視している劇場の場合、推奨の交換時間をオーバーして使ったりしている映画館もあり、さらにはその交換時間を伸ばそうと、ランプパワーを凄く下げて、暗い映像で流している映画館もあります。あと映写窓も綺麗かどうかも一つの基準ですかね。

音は外から観て分かりにくいです。

設備的な上映品質を考える

次に、設備での上映品質を考えます。これは好みの視点ではなく、理屈的に組み上げて、上映環境として理想の設備を考えたいと思います。

 

画の品質を考える

1、スクリーン生地はなるだけホワイトに近い物。

まあスクリーンはホワイトに近い方がいいです。シルバーも悪くはないですが、最終的な詰めで、色味が正確じゃなくなるのでホワイトやパールホワイトなどがオススメです。ただし、最近はシルバーでもとてもいい発色をするスクリーンもあるのでこれはそのうちどっちでもいいかもとなるかもしれない。

 

2、なるべくフラットに近いスクリーンの形で壁から壁に届くスクリーンが良い。

単純に画はある程度大きい方が後ろの席でも一律で楽しめるので良いと思います。大きすぎると前の方でしんどいですが…そして壁から壁のスクリーンというは音にもかかわってきます。音の品質を考える1、の項目で説明します。

フラットスクリーンが良い理由はこちらの記事で説明しています。

 

achamiya.hatenablog.com

 

3、場内の内装が単色で統一されていて、あんまり反射しない色。

これかなり大事でカラフルな内装はデザイン的に面白くてカワイイですが、画を観るという点ではただ邪魔にしかなりませんし、反射された色がついた光がスクリーンに映りこみ、映像品質もさがります。

 

4、足元を照らす足下灯などの場内灯が弱いか工夫されている

消防法やいろんなお客さんの安全を守るうえで上映中も消せない光というのがあります。この光がオレンジ色だったり、緑色だったりするする場合、どうしてもスクリーンがその色を拾ってしまうのでちょっと色味が変化します。
この光自体はキャリブレーション中も消せない事が多いので、キャリブレーションも理想値に届きにくくなります。なので色が入っているよりは白のライトの方がまだいいかな?と体感ですが。あとは光量や床の反射を抑える工夫がされているかです。

 

だいたいこの4つが分かりやすい品質に結びつく要因かなとおもいます。

 

音の品質を考える

1、スピーカーが表に出ていない。

これは映像品質にも影響します。映像品質を考えるの2、の項目で触れた、壁から壁のスクリーンが良いの話に関わってきます。
単純に、光の反射物が増えるので良くないというのが映像品質に関わる理由ですが、音の理由が大きく二つあると考えています。

 

まず音の質感が飛び出ているスピーカーだけ変わってしまう。というデメリットがあります。映画館の音響システムはセンターチャンネルという、スクリーンの真ん中の裏にスピーカーが存在します。
※ミニシアターなどではスクリーンの下に置いてる場合もあります

なので、何が何でもセンタースピーカーはスクリーンを通した音になります。
音の透過率がどんなに高いスクリーンでも透過する以外にも音の反射が生まれるので多少なりとも変化は絶対します。

しかし、レフト、ライトスピーカーが丸だしだったりする場合、センターだけその変化がおき、両サイドになるレフト、ライトスピーカーはそのスクリーンによる音の変化をしない事になります。

最近の映画は音があっちこっちに動くので、求められる条件の一つにどのスピーカーも同じ条件で音を出すのが理想になります。特に一番耳につくメインスピーカーの3つなのでここの音の違いは良くありません。

そのため、壁から壁にスクリーンを貼ってしまえば、全部スクリーンの裏に収まるので解決というちょっと乱暴な考えです。

その延長で、サラウンドもサラウンドの前にメインのスクリーンと同じスクリーン生地を貼って壁の中に埋めちゃっているサラウンドが個人的には理想だなと思います。

 

2、音響システムが新しい

身も蓋もない話ですが、ぶっちゃけコレだとおもいます。

何故なら、35mmフィルム時代に求められていた映画館の音響システムと現在求められている音響システムではもう別物のレベルで違います。
私の映画館も旧来のシステムのスクリーンがありますが、スペック的にも音的にもとても良いスクリーンです。しかし最近の映画を掛けるとなると、いろいろ足りないというか機材への負担が凄まじいです。

リファレンスといわれる音量で上映する時にはサラウンドとSWに関してはもう壊れない事を祈るか、保護の目的で音量を下げたり、音に電気的にフィルターと言われるものをかけたりするしかないです。メインスピーカーも実は何度も壊れています。ただこれはウチだけに限った話ではなく全国区の話です。

実際にTENETやダンケルクといった悪魔の所業と言っても過言ではないようなサウンドデザインをしてくる某監督の作品の時には全国でいろんな劇場が大変な事になったそうです。

そもそも音響システムの許容できる以上の音が突っ込まれると、音が歪んだりして綺麗に鳴らせないので、だったら音量下げるよ…っていう悪循環にもなります。

 

音的にぱっと考えられる要素はこの二つでしょうか。

いや、音が良い最大の要素に劇場の建築があるんですが、これは説明も難しければ理想的な環境を構築するのは非現実的なところもあるので、今は省きました。

細かく言えば画も音ももっといっぱいあるのですが、それ以上は本当に深淵の領域なので、飲みの席で語りましょう(?)

 

長くなりましたが、ではまた。

 

 

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