映写雑記

映画館の設備視点

映画館の「リップシンク」

こんにちは、今日は「リップシンク」について考えて行くよ。

 

リップシンクとは。

リップシンクってなんぞやって人に解説すると、音と画の同期の事です。
リップってそのまま唇の事だった気がする。人がしゃべるとき、口の動きと聞こえてくる音がずれると、いっこく堂さんみたいになったりしちゃったり、音楽や効果音が目で見た視覚情報と一致しなくて気持ち悪くなります。なので映画館ではちゃんとリップシンクを調整します。

おもにDCPの話をするよ。35mmはなんか最近やってなかったせいで細かいところ忘れちゃって上手く話せないから、今度やった時に思い出したら書きます。

 

なぜ調整が必要なのか

DCPを再生した時にデータからの映像と音の信号はほぼ同時によーいどんで発信されているとは思いますが、音響機器やプロジェクターを通っている間にいろんな処理が行われ、同じ機械じゃないからどんどん遅延の具合がずれて行きます。

基本的に映像処理の遅延の方が大きいので映像がとても遅れて表示されます。
そうすると、映像と音がズレてしまい、観ててかなりストレスになるので、しっかり合わせます。

どうやって合わせるのか

測定器があります。その測定器をつかって合わせて行きます。
僕がよく観る測定器は1ms単位で測定できるので、1ms単位で合わせていきます。
まず白い四角い点滅映像とその点滅と同時に1kHzのポッポッポッポって鳴るデータをループで再生し、測定器で画と音のズレを測定し、SMSサーバーの音声側か音響機器の方にディレイを入力していきます。

基本的に、出力を速くする事はできないので、出が速い方にディレイをかけていくスタンスですね。

大よそドルビーポイントと言われるポイントか、Bチェーン時に主となるマイク位置の席で合わせます。

リップシンクがズレているというのは

僕の劇場は僕が神経質なのもあって測定ポイントで測定器が0ms表示になるまで調整しますが、だんだん疲れてくるので測定器を微妙に前後に動かしたりしてごまかry

いえ、ちゃんと調整しますが、30msぐらいのズレだとあんまり気にしなくてもいいかもしれません。何故なら、音速340m/秒なので、1msずれると34cm分到達時間がズレます。劇場はニアフィールドというには少し広いので、測定ポイントより10m前のスクリーンに近い座席では、約30ms速く音が聞こえます。逆に後ろになれば音の到達もそれだけ遅くなりますので結局ズレます。41ms以上ずれるとだいたい24fpsの1フレーム分ずれるのでちょっと気持ち悪いですが、結構みなさん、最前列で観たり最後列で観たりしていると思います、しかしそこを気になったって言っている人を一般の人で僕は観た事がありません。IMAXとかの大型の劇場であれば顕著に感じるかもしれませんが。

それと理屈は分かりませんが、音と画が100%合っている状態ってなんか逆にシンクがズレて感じるんですよね。いやほんと理屈はわからないんですが。

音の到達がLRで1msずれるというのは大参事というか大問題なんですが(とはいえ1msレベルで追い込むには箱とか色々な問題があって大変)、画と音に関してのリップシンクについては少し雑に考えても大丈夫かなと思っています。

以前、測定器が無くて、感覚だけで僕とインストーラー業者のベテラン2人の3人でリップシンクを合わせに行った事があったんですが、後日測定器で測ると30msずれてました。そんぐらい難しいです。

まあどのみち、1kHzだけで測定しているので、他の帯域ではちょっとずれてる可能性が高いですけどね。主にLFE。

 

ちょっとした雑学的な感じでした。