はいこんにちは。
今回はちょっとレーザープロジェクターと眼鏡のお話です。
最近、視力が落ちて眼鏡を作りました。
そして、以前から言われていた事があります。
レーザープロジェクターと眼鏡は相性が悪いと。
せっかく眼鏡作ったので自分でもどうなのか検証したり、いつもお世話になっているエンジニアさんに協力してもらいいろいろと実験してみました。
レーザープロジェクター視聴時での眼鏡の弊害
レーザープロジェクターの映像を眼鏡で観たときにはどういった事が起きるのかという現象を知っている限りでピックアップしてみます。
・色が滲む
・虹色っぽい色が見える
・色が変になる
良く言われているのはこの辺りだと思います。
色が滲む
これは色収差の事です。おしゃれなイラストとかで輪郭線が赤緑とかの二重線になっているあれです。イラストは表現ですが写真とかでも起きる事で、アーティストさんとかだとわざとそうした表現をする事がありますね。
あれが起きます。眼鏡の縁辺りで良く見受けられるようで、度が強くレンズの球面が激しいレンズで起こりやすいようです。
今回僕が買った眼鏡のレンズは安価とはいえ平面レンズだったためか、この色収差を自分で体感する事はできませんでした。ただ視聴角度などの条件が合えばもしかしたら起こりうるかもと思います。
虹っぽい色が見える
これはあまり詳しくわかりませんが、僕の後輩が眼鏡かけてると良くなるらしいです。理由はよくわかりませんが、コーティングや乱視用とかそいうので影響されてそうですね。
色が変になる
そのままの意味で裸眼と色が違います。
実際僕が買った眼鏡も、見た目はとても透明度が高くほぼ肉眼ではクリアにしかみえないのですが、それでも眼鏡をかけてみると色が変わります。
どうもアンチグレアと防傷などのコーティングのせいだそうです。
自分の眼鏡で観た限りでは緑が映え気味に見えすこし黄色味が強いような、ほとんど白な青系の光の加減もなんかちょっと色が違うように見えます。
ただ色の違いはレーザープロジェクターに限らず、全ての色に適応されるのではとも思い、実際の緑色の物や自然をみたり、家の有機EL テレビや同じく有機ELですがiPhone14proの画面を裸眼と比べてみたのですが、レーザープロジェクターほどの差を感じませんでした。たぶんコーティングの影響はあるとおもうので差は出来ているとは思うのですが、あからさまな差はないように思いますが、白色の光は少し違うかなという感じ。
その事から直進性の強い光であるレーザーは顕著に変わるのではないかと思っております。学術的なエビデンスは持ってませんのであくまで個人比較。
映画館の映像の色
前知識として、映画館の映像で使われている色について説明します。
映画館のプロジェクターの色はDCI-P3という色域を使っています。なんそれって感じだと思うので、そこら辺のディスプレイやプロジェクターよりたくさんの色を再生できるよって感じで覚えておいてもらえれば大丈夫です。まあ最近は高性能な物が増えたので一概にそうではないのだけど。
人間の認識できる色を色相環の平面図みたいな色の海図みたいなやつにしてその上にRGBの座標を測定で割り出し指定して、結んだ三角形のエリアがプロジェクターが表現できる色として適応されます。
そして基準は光の三原色であり赤、緑、青の三原色の光で映画の色は再生されています。
最近映画館で主流になってきているRGBレーザープロジェクターは三原色の原色の光である赤、緑、青を各々をレーザーの綺麗で強い光で映しだすので色の再現性が高いとかなんとか。
キャリブレーション
次に色補正の作業についての説明をします。
業務機である映画館のプロジェクターはカラーキャリブレーションという、その色が正しく再生されているかどうかを測定して更正するという作業を定期的にやります。映画館のプロジェクターに限らず色を扱う仕事をする人がつかう機材はどの機材も絶対に行っている作業です。
レーザーユニットの状態やプリズムの経年、DMDの状態といった色んな要因で色はズレるので映画館では欠かせない作業です。
正しく更正されたキャリブレーションカメラでRGBの原色の色を測定し、色のデータを入力して出力される色の補正を行っていきます。
僕の今メインで使っているバルコのプロジェクターはRGBを測定してその色域座標をいれると白の色域座標が決まり、白の座標点を元に正しく色がでているかを判断する感じになっています。
座標点はDCI-P3でRGBWとともにXYの値が定められていて、±のある程度の許容値はありますが、その座標点を目標に測定して更正していきます。
その座標点をみるキャリブレーションカメラは冒頭にある写真がそのカメラです。とてもお高い。
レーザープロジェクターの映像を裸眼とメガネで色を比べる
色収差とかはちょっと僕の眼鏡では上手くできなかったのもありますが、今回は色への影響を見ていく実験をしてみたいと思います。
まず普通に色のキャリブレーションを行います。
そのキャリブレーションを行った後にキャリブレーションカメラに眼鏡をかけてみて、色の座標点がどうズレるかを計測。
肉眼ベースでの色の変化ではなく思いつきの実験ですが、色にどう影響するかの参考にはなるかと思います。
実験
実験に使用したのは僕の眼鏡のレンズとエンジニアさんの眼鏡もお借りしました。
エンジニアさんの眼鏡は詳細わかりませんが、量販店のよくあるレンズですが度が結構強い分厚い物で、あと確か乱視も入っていたはずと言ってました。
僕はとてもガチャ目なので左目と右目で全く仕様が違うため、両方で試してみました。
実際のところ、眼鏡レンズのコーティングやら仕様やらなんやらの質でも全然違うと思うのであくまで参考です。
僕の眼鏡のレンズデータ
メーカーと型式
フィニッシュドSV AS 1.60 DVS
レンズ1 Sph:-1.25
レンズ2 Sph:-0.00 Cyl:+0.50 A:90
の二つの眼鏡レンズになります。
Sphが-1.25の方をレンズ1Sphが-0.00の方をレンズ2として、エンジニアさんの眼鏡レンズをレンズ3とします。
まず普通にキャリブレーションした数値です。
R
X 0.6743 Y 0.3196
G
X 0.2628 Y 0.6846
B
X0.1511 Y 0.0618
W
X 0.3125 Y 0.3503
という数値になりました。大変良い数値です。各色には基準点と許容値が存在し、その基準点にいかに近くするかをする作業です。許容値も結構狭いのですが、かなり基準点に近い数値です。よく劇場の映像が綺麗って褒められるスクリーンですので数字で見ても納得かと思います。
この数値をベースに眼鏡をかけて測定してみます。
表にしました。一番左が基準のキャリブレーション数値です。
R | レンズ1 | レンズ2 | レンズ3 | |
0.6743 | X | 0.6743 | 0.6757 | 0.6755 |
0.3196 | Y | 0.3193 | 0.3189 | 0.3193 |
G | ||||
0.2628 | X | 0.2662 | 0.2685 | 0.2657 |
0.6846 | Y | 0.6815 | 0.6800 | 0.6818 |
B | ||||
0.1511 | X | 0.1511 | 0.1520 | 0.1519 |
0.0618 | Y | 0.0619 | 0.0627 | 0.0623 |
W | ||||
0.3125 | X | 0.3141 | 0.3159 | 0.3152 |
0.3503 |
Y |
0.3520 | 0.3524 | 0.3494 |
割と細々と数値は動きますが、カメラの仕様的な問題で数値は若干測定するごとに変動するので、完全に一緒じゃ無い事もあるので、すごく小さな変動は変化無しとします。
見る限り、肉眼での感覚と同様にGつまり緑の数値の変動が大きいですね。
Rはほとんど影響されず、Bもレンズ2では少し動いています。
数字で見る限り、度の影響より乱視補正の影響の方がありそう。レンズ2は度は入っていません。なのでGはプラスティックメガネのコーティングの影響と乱視補正の影響がでているとみるのが自然かなと。ただコーティングの差は思っていたより微々たるものですね。
RBに関してはレンズ1のRBがほぼ同じ数値で乱視が入っているレンズ2と3でRBの差がでているという点をみるとコーティングの影響はほぼなく、RBは乱視補正で影響が出るという事が考えられるのかなと。
Wに関しては、赤や緑の方に少し座標が動く感じですね。色的には黄色っぽい色による感じ?
RGBWの各許容値にかんしては、色ごとに違いまして、Bが一番許容値が狭く厳しいです。
一番ずれているGも許容値範囲ではあるので、この数値であれば普通に許可は出てしまう数値ではあるのですが、この微妙な差が肉眼での比べでだいぶ影響がでていると考えると、人間の眼の精度ってすごいんだなと思いますね。
まとめ
・メガネのコーティングでは緑色への影響が大きい。
・乱視補正でRGB全てに影響される。
・コーティングと乱視補正が両方あるとその分足されてズレるのでズレが大きくなる。
という感じでしょうか。
キセノン機でも試してみたいのですが、今自分の劇場にキセノン機のDLPが無いのですよね。
クリスティのキセノンDLPほしいなぁ!!!!!!
今回の実験はあくまで現場レベルの簡単な物なので、レンズメーカーさんとかがおそらくもっと詳細で完璧なデータをとっていると思います。もしかしたら何処かにちゃんとしたデータがあるかもしれません。
それと、目がいい人ならレーザー光源以外でも変化は感じ取れているのではないでしょうか。
今回はそこそこ面白い実験ができたなと思いました。
また何か思いつきで実験したいなぁと思います。たまには音の実験もしたいな。