映写雑記

映画館の設備視点

映画館の「Xカーブ」について考える

こんにちは、

生きてます。

 

さて、スタジオの人たちと話すと絶対といえるほど話題になるXカーブ。
大きくざっくりな仕様は知っているけど、しっかり把握している人って業界でも少ない基準でもあります。僕も「なんかしらんがLowとHiをオクターブ-3dBでロールオフしていく決まり」という感じのざっくりした感じでしか知りませんでした。

そして音について色々と勉強していくにつれて疑問に思ったのです。
「高域の方が距離減衰が強いのにロールオフさせたらダメじゃない?」というのと、
人間の聴覚の聴こえ方を定量化した等ラウドネス曲線というものがありますが、その理屈とも合わないこのXカーブ。そもそもスウィートスポットより後方はさらにロールオフするし、前方はハイ強めになります。

うーんって思っていたら、よく音について先生をしてくれる(実際に大学とかで講義してる)T木さんから「君のその悩みを解消する良いものがあるぞ」と有難い論文?映画音響史?を見せてもらえたので、その論文を元にXカーブってどうなんって考えてみたいと思います。

参考にするのはドルビー社の映画音響で凄い人でもあるレコーディングエンジニアのヨアン・アレンさんが書いてたXカーブの歴史と原点みたいな2006年のちょいと古いやつ。

 

けど僕英語苦手だから翻訳と解釈を盛大に間違えている可能性が否定できないのはご愛敬で!!!!

 

そもそもX-カーブって?

映画館で音響システムを構築するさいに、最後にBチェーンという劇場の音響特性を電気的に調整する作業があります。

音楽とか音について何かしらやったことある人は見た事あると思いますが、リアルタイムアナライザーという20Hz~20kHzの周波数の強弱をを見る事ができる測定器があります。それを観ながら、EQを使って映画館の周波数特性を作っていきます。

その時にこいう周波数特性で作ってねっていう周波数カーブが「X-カーブ」です。

スタジオと劇場の再生環境を統一していきましょっていう基準です。
ワイドレンジカーブ、アカデミーカーブともいわれたりします。ショートレンジの方をNカーブともいうらしい。

X-カーブの始まり

X-カーブの始まりはどうも1937年まで遡るらしい。
そんな昔から考えられてたなんて、頭のいい人たちはすごいなぁと思う。
磁気トラックのAチェーンがノイズの関係でLowとHiのロールオフをしていた事と、当時の一般的な劇場用スピーカーであった2wayのアルテックやフォースターのスピーカーでの再生環境にスタジオを合わせようって事がどうも始まりらしい。

ここで一つ僕は新しい発見だったのだけど、僕は今までスタジオの音を再現するために「スタジオに劇場を合わせている」という認識だったのだけど、元は「スタジオを劇場に合わせる」が目的だったようだ。

ああなるほど、そうするとちょっと納得できるなと思う事もちらほら。

当時の劇場測定資料を見ると、アルテックのスピーカーが超極端なX-カーブのような特性を持っている事が見える。
※みんなにも見せたいんだけど切り貼り引用がいいのかわからないからごめんよ。

ファーフィールドの劇場なのでしっかり高域が負けて減衰しているという感じで、Midあたりにあるディップはクロスオーバーとおもう。
そしてフェノール含侵樹脂ダイアフラムのドライバーと金属系のダイアフラムのドライバーの両方の特性を測定している。

2k~8kで18dBも急激な減衰をしている。Lowは割とフラットな感じだが、この時代のマイクロフォンの低域に信用性が少し疑問なのでちょっと割愛。

そしてそのファーフィールドの環境特性を割とフラットなニアフィールドのスタジオもそうするかーみたいな事っぽい。

 

時代ごとに代わっていくX-カーブとカーブ本来の狙い

ただしこれは機材が時代と共によくなりアップデートされていくとそもそも破綻してくる、そこで改めてどんどん見直しが入る。最初は上は8kHzが上限だった物が測定技術の向上とイコライザー搭載されたシステムが出てきたり、フィルムの光学トラックのノイズリダクションの向上で最終的には16kHzまで上限が伸び、この上限が伸びるたびにカーブが緩やかになっていく。

そしてこのカーブが本来目指すところは、劇場の音をフラット特性にするためが狙いだったようだ。

なんでフラット特性にするのにロールオフさせなければいけないんだっていう話だけど、そこはピンクノイズでの測定がかかわってくる。

残響が大きくなるファーフィールドの劇場をピンクノイズでフラット特性にするには、初期到達音の信号が残響のせいでHi上がりになっちゃうから信号の段階で電気的にロールオフさせておいて、初期到達音の信号は、劇場の残響が加わってルームゲインが狙ったところにきたらフラットになるからって考え方のようだ。

いやそれどうなんっていう話なんだけど。
ただ言いたい事はわかった。確かに理屈は通ってる。いやでもそれどうなん

それと、劇場の大きさで本来小劇場~大劇場でカーブの種類を使い分けなければいけないという問題もあるが、現状日本でそれをしているスクリーンはあるのだろうか。
といっても500席くらいまでが小規模扱いされている感じあるからあまり必要なさそうではあるけども。。。

余談

余談だけど、ヨアンさんの知り合いが劇場の試写でみたら、スタジオで作った時の音よりセリフがきこえないっ劇伴やSEがうるさ過ぎるて突っ込まれたヨアンさんの時の話が面白かった。おそらくこれ邦画でよく起きている現象でもある。

ピンクノイズでカーブを設定するにあたってやはり箱の残響によって直接音と間接音、初期到達音から2次~の音によってLRのバランスとCchの量感というか音がニアとファーで変わるのは容易に想像できるが、まさにそのせいで、ニアでフラットな音と距離感のスタジオとファーの劇場ではそもそもこの測定方法では帳尻が合わないと個人的に思う。ヨアンさんもたぶんこれ測定と調整方法が正解じゃないんだよねぽい事書いてた。

ただ現在ではあまりそれが起きないように色々調整してるって書いてあるから日本ちょっとやっぱ遅れてるのではとも思った。なお70年代くらいの話。

X-カーブの存在意味

確かに、昔のスピーカーシステムや音源であれば、あった方が良かったと思う。
そしてダビングスタジオもXカーブを入れているが(MA等のダビング以外では使用されない。前述のとおり基本的にファーフィールド用のため)、正直日本の大きさのスタジオでならフラット特性を目的とするならば必要ないのではないかと思う。

劇場もそうだ。

吸音などの建築音響の方が進歩しているので一概に残響あるからで決められてしまったカーブを鵜呑みするのはどうなのかと思う。
それに、最近のスピーカーはラインアレイ等が普及してビームコントロールがとても向上しているので、正解にたどり着けないということになる。

なんなら、この時代とともに魔改造されてきた基準は色々なテストはしているが、フラット特性っぽいっていう数値化されたエビデンスってあんま無さそうで、聴感上で聴いて主観で決められてきたっぽい基準でもある。

そこにきて、今、音の測定技術のスタンダードであるデュアルチャンネルFFTでコヒーレントや位相を観ながらインパルスもみてというソフトも充実してきている。
だからもうそのソフトたちに倣ってスタジオも劇場もフラットにして後の差異は適当に合わせりゃいいのではとも思う。

ヨアンさんも、いやなんか主観多すぎて合ってる気がしないんだけど、なんかみんな問題定義しないで今まで使われてきてるから多分合ってるんよみたいなこと言ってた気がする。

 

そういえば、フラットになるように考えるためのカーブである以上、劇場はXカーブあるんだからハイの抜けがよくなるようにハイあげとこなんていう音作りしちゃだめですよ。

 

と、何となくで解釈して自分の考えも並べてみたけど、この僕の英語理解力で内容の解釈が合ってる気が全くしない。頓珍漢な事言ってる可能性があるのでそしたらごめんなさい!!!

ではまた。

『TAR』を映写視点でみるよ。

こんにちは、久々のブログだよ。

今日は、最近観た映画の中でダントツの音の良さを誇る『TAR』について書いていこうと思います。

文章だけだとさみしいので、なんかこんな感じだったなって適当な落書きも付けました。

個人的に感じた事やそう思った事をただ綴るだけなので、作った人たちやプロの人たちから見ると実際は違うかもしれないのでそこはご容赦くださいませ。

あとちょっとネタバレしてます。

 

映画『TAR/ター』公式サイト (gaga.ne.jp)

『TAR』はめちゃくちゃ音が良い

さて、僕が一番言いたい事は、『TAR』のサウンドデザインが凄すぎるという事。
トップガン・マーヴェリックやザ・フラッシュのような煌びやかな派手な音ではなく、本当の質のいいサウンドデザインの映画だということ。

冒頭から引き込まれる作品になっているけども、サウンドの構成が良いだけではなくて、単純に録音の質が高い。OPの音楽で「あ、これ音いいやつ」って認識させられるぐらい録音が良いです。

そもそも、録音の質が良いというのはどいうことかという話なのだけど、スペック的にみればサンプリング周波数とビット数が大きければ大きいほど強い!音が良い!というイメージがあると思う。でもそれはスペック上の音が良いであって実際に聞いたときの音が良いとはちょっと違うと思っている。
この辺は趣味と好みがあるので、一概に押し付ける事はできないのであくまで僕の話という前置きで、「音の重心」を僕はかなり重視した見方をしている。

周波数が高い低いとかではなく、純音以外の音には重心があってその重心が据わってるか正しいと音がいいなぁと僕は思う。
武術とかでの丹田の下あたりに重心がある動きが美しく感じるような感覚だろうか。

これはメディアに収録されている音でもそうだけど、音響システムの音でも重視している。
というか各ユニットの位相角がしっかり合っていいて音軸もしっかり通っているスピーカーは勝手にそんな音になる、と思っている。

そして重心が据わっている音は聞きやすい。耳疲れもしない。

『TAR』はそんな録音。

 

この映画は音での表現もすごいと感じた。
ツイッターでも少し触れたけど、ケイト・ブランシェットメトロノームの音に気付いて目を覚まして探すシーンがある。
その最初、目を覚ますまでは音が目の前で鳴っていて、目が覚めたらメトロノームのある方向から小さく聞こえる。
アラームで起きるときって音の認識ってそんな感じだなと思って、謎にそこにとても感動した。

あと部屋の暗騒音がシーンが切り替わってもBGMのように続いているシーンがある。
あれ、その暗騒音続けるのかと思ったんだけど、これ暗騒音と見せかけて心情の表現なんだ!と思ったときおぉすげぇと思ってしまった。

映画は映像と音が50:50だというスピルバーグだかルーカスだかの名言があるけどもこの映画はさらに上の表現に到達しているようにも感じる。

画の色ってその時の役者の心情だったり場面だったり合わせて表現としてライティングとかで色を乗せていることが多い。

音もそうなんだけど、めちゃくちゃこの『TAR』はその音の色が見える。
画というか役者やストーリーに合わせて色がどんどん変わる。

そのせいで没入感があり、映像から目が離せなくなるわけだ。
これはディスクが発売されて、ステレオで見るテレビやヘッドホン・イヤホンだとちょっと体験しがたいと思う。

音の引き算も凄く緻密に計算されているなと思う。まったくガチャガチャした音を感じさせない。

 

あととても、当たり前のようで、出来ている映画って結構少ないのだけど、画面の音の発生源の方向から音がちゃんと鳴っている。

どいうことかというと、オーケストラの練習シーンなんかで、楽器の位置と出音がちゃんとあっている。
チェロが画面中央で音を出しているときはちゃんと画面中央から音がしていて、若干難しいCchとLとかRchの間当たりの空間に音を出している物があるときは、しっかりその間に音がでている。これはドルビーアトモスでつくられている恩恵かもしれない。5.1chでもしっかり表現されている。

よくありがちな、なんでそうなったっていうケースがある。
セリフはCchから出ていて歌う人が中央にいるのに歌唱シーンになったとたんステレオでLRからボーカルが聴こえる。台無しやんけとよく突っ込んでいる。

楽器も同じケースが多い。おいおいそのピアノ画面の中央に見えるけど画面の両サイドから音がしてんぞ、みたいな。
主に邦画や邦アニメでこのケースはべらぼうに多い。最近ちゃんと作ってきたぞ!と感動する作品もよく目にするようになったけど、とにかく多い。まあ色んな大人の事情があるのだろう。でもこれ映画なんだよテレビじゃないんだよと言いたい。

ちょっと脱線したけど、『TAR』は音が出てきてる方向と画が本当にうまく嫌味なく重なっている。

サラウンドでの音もいかにもSEですみたいな音ではなく、自然に音の方向だけを意識させて物語から意識が途切れない作られ方がされていて、2時間30分超えている映画に思えない没入感がある。

まあ話が抽象的だったり理屈で理解しにくい部分があってそこでダレる人もいるだろうなとは思う。

ダイナミックレンジも広く、小さい音と大きい音のバランスが素晴らしい。微細な音の変化を楽しめる高能率のスピーカーがとても重要になると思う。

音も立体的で箱の壁を感じない録音となっている。感じる場合は劇場のシステムを少し見直した方がいいかもしれない。

 

『TAR』の再生で劇場の音響システムの良さがわかる

といろいろ書いたけど、あまりにもデザインがいいので、この映画で音響システムの良しあしがある程度わかってしまう。

ちなみに僕のいる映画館でも完全に鳴らしきれているかと言うと、NOであり、まだまだ改善しなきゃいけないポイントがあるなと再認識させられた。
映画の音は派手なだけじゃないのだよ、とも思った。

ウチは完璧に鳴らせているぜっていう映画館があったら是非教えてほしい。

でも2時間40分弱は何度も見るのしんどいな...

 

あとあまりに長くなるから触れてないけど、映像も凄く綺麗です。
あのシネマティックレンズのフィルター(適当写真アプリのフィルターを指して言ってるので違うかも)の権化みたいなブルーやグリーンみあるグレーの色彩を表現できる劇場って少ないと思うよ。色が付きすぎるか全然色がでないかという結構難しいいやらしい色していると思う。

 

ではまた。

 

 

映画館で「Sync-One2」を使って映像と音声のリップシンクを測定するよ。

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくね。という事で新年最初のブログは、以前ちょっとブログネタにもしました

 

achamiya.hatenablog.comこのリップシンクの測定と調整をやっていこうと思います。
結論だけ言ってしまえば、以前調整したままズレてなかったので調整はしなかったのですが、今回は業者さんに頼らずセルフでやってみました。

測定器さえあれば、ホームシアターでも可能というかポスプロやホームシアターでの調整の方が遣りやすいと思います。参考にしてみてください。

リップシンクの測定器

リップシンクの測定器があります。ちょっと前に某XのAさんに頼んで買ってあったのですが、積んだままだった測定器「Sync-One2」を引っ張り出しました。

これがその測定器。やり方としては白色の画像の点滅に合わせて3kHzぐらいのビープ音が鳴るのをマイクとカメラで拾ってどのくらいズレているかを測定します。

取説を読んだ感じ、設定としてこちらがしておくのはフレームレートの設定だけで良さそうなので、フレームレートを設定します。
映画のフレームレート(単位はfps)は秒間24枚の映像なので24fpsになります。

単純な感じが扱いやすくていいですね。

測定に使うテストファイルを用意する

本体の設定がおわったら、テストチャートファイルを目的や再生に対応したフォーマットで用意します。
メーカーのHarkwoodのサイトからDLできます。

フレームレートと映像コーデック、音声フォーマット、トラック数にといろんな種類があります。ただし1080x以下と4Kに関してはそんなに種類はありませんでした。
映像処理の遅延でズレルと思うので、UHD等の素材を想定しているホームシアターであれば4Kのファイルを使うといいかもしれません。

一通り探しましたが、映画館で使うDCPでは配布されていないっぽいですね。
ということでDCPを作成します。

あまり映像コーデックには詳しくないため、適当に仕様をぐぐりながら当たり障り無さそうなH.264を使い、24fpsでPCM音声で5.1chというファイルを使用する事にしました。
正直、映像の点滅とビープ音が同時に再生されればテストファイルとして問題ないはずです。
Variableというバージョンもありますが、こちらは点滅が不規則に点滅するようになっています、平均アベレージで観る場合そちらの方が良いと思いますが、今回はとりあえずスタンダードの一定間隔の点滅ファイルを使用します。

ブルーレイ上映ではプレイヤーの処理遅延も入ってくるので、できればブルーレイディスクリッピングしたものも作りたかったのですが、BDの書き込みできる環境がないので今回はスルーしました。USBメモリーからの再生もできますが、一応ディスクの読み込みという同条件での測定をしたかったのでブルーレイプレイヤーの測定は今回は見送りです。

DCPに変換して、上映サーバーにインジェストしたところ、しっかり再生できました。よかったよかった。
ちなみに、DCIの基準でDCPはLinuxベースで作成するのが基本となっています。小さい配給とかではWinやMacで変換している物がたまにありますが、基本はext3ext4ジャーナリングファイルシステムとやらを使用するようです。NTFSやHFSもサーバー側は一応対応させてはいますが、よく読み込みできなかったりします。
それと読み込みはできたところで、再生ができない場合もあるので、基本的には興行で使うデータはIMAGICAやキューテックのようなちゃんとしたところに頼みましょう。


撮影したiphoneの問題で滲んで見えるけど、実際はとっても綺麗に映ってます。

映像と音声のズレを測定するよ


準備ができたので測定していきます。写真みたいな感じでテストファイルを再生しつつ、Sync-One2のカメラとマイクをスクリーンに向けます。
ちなみに電源入れたときにキャリブレーションのアクションが入るのですが、その時にもテストファイルを再生して測定しておくと良いそう。

5.1ch素材ですがCchからしかビープ音はでません。ただCchで基本は合わせるのでこれでおkです。

こんな風に表示されます。前回の調整時と全く同じポジションで測定しました。
全くずれていません。Aというアベレージの項目では多少上下しており+002となっていますが、ほぼ000なので大丈夫でしょう。
本来であればこのmsと書かれた部分の数値をみて、+020と表示されたなら、音が20ms速いという事のため、音響機材の方で20msのディレイをかけます。映画館であればプロセッサーか上映サーバーにディレイ機能があるのでそちらでディレイをかけます。-で表示された場合音が遅いので映像にディレイを掛けなければですが、基本的に映像の方が遅いのでめったにそんな事は無いと思います。CODA AUDIOとかのめちゃくちゃ遅延のおきる処理の鬼みたいなスピーカーを使用していれば別ですが。

まあ処理速度って基本的に機材事のスペックの遅延が割と正確なので、あまり前後しないかなとおもいます。
折角なので、最前列と最後列でも測定してみました。

最前列です。
当たり前ですが、音声が速くなり26ms先に届きます。だいたい移動距離で9mぐらい前方に移動したのでほぼ正確に音速分速くなっている感じです。

フレームでいうと0.6フレーム分速く音が聞こえているという事ですね。

次に最後列を観てみます。

当然ですが、誤差000msの地点から後ろなので音声が映像より遅くなりました。
基準としている000msの地点はドルビーポイントとしているので後方までの距離の方が近いため、影響は最後列の方が少ないです。

まあ通常の映画を観ていて30msの違いが分かるかと言われると少し疑問ですが、しっかり合わせている事が気持ちがいいので拘りたいと思います。

やってみて思った事

さて、測定をしてみて思った事があるのですが、このリップシンクってどこで合わせるのが正しいのでしょうか。
スクリーンからの音声を基準に考えるのであれば最前列で合わせる方が正しい気がするとも思いました。人間はその音の遅れを距離感としてちゃんと認識できるので映像に合わせるなら最前列ではという疑問があります。

ただサラウンドを考えるとドルビーポイントのようなスイートスポットで考えるべきだと思いますし、ドルビーアトモスなどはシミュレーション上は劇場中央を起点にオブジェクトを配置していく形だったと思うので、やはり劇場の音の基準点で合わせるのがいいのかなとも思い応えが出ません。DCIとかで明確にきまってるんですかねこれ。

あと、スピーカーの時間軸の調整はまた別途の調整となります。Cchの音声と映像があっているからといって、他のスピーカーが合っているとは限りません。LとかRは遅れているかもしれない。
映画館のBチェーンでインパルスなどを視てスピーカーのタイムアライメントまで見ている劇場って少ないため、ここも要チェックですね。

それともう一つ懸念ですが、たぶん3kHzのこの高い音って事はクロスが3kHz以下で組まれているスピーカーでツィーターだけでビープ音を再生している場合、ここできっちり合わせてもmid以下のユニットはツィーター程速く動けないので、そこもズレるんじゃぁないかなぁと思ったりして、沼りそうです。
まあ最近のスピーカーはユニット遅延がだいぶ改善されているのであまり考えなくてもよさそうですが。

とまあ、測定としてはとっても単純で簡単な事ですが、映像と音を突き詰めていくとなるとこういった小さいところにも拘っていきたいですね。

良い勉強でした。

ちなみに家庭でもできます。このSync-One2は10万弱で購入できますので、拘る人は一家に一台如何でしょう。

ではまた

 

 

映写技師が選ぶ2022年の映画ベスト5

こんにちは、日付変わって大晦日になってしまいましたが、今年の観た映画の中で個人的に良かった映画ベスト5を書いていこうと思います。

もちろん話の内容は度外視で、絵と音のクオリティを映写としての観点から良いと思って選んだベスト発表になります。

ちなみにベスト5なだけでランキングはつけてません。

女神の継承

https://synca.jp/megami/

韓国のホラー映画の『女神の継承』が入ります。
これ、ドキュメンタリー風の作風なので、テレビの取材みたいな感じの絵と音作りがベースになっているんですが、リアルすぎて怖いです。ああ、そうそう取材の音ってこんなんだよね、とかハンディカムで撮ってるとこんな音入るよねみたいなそんな中にめちゃくちゃ急にホラーなサウンドデザインが放り込まれて、とにかく怖いです。絵もわかりにくい暗所のシーンも多く、プロジェクターのコントラストや劇場の迷光などの対策が試されます。ランプ暗くしてると台無しな感じですね。

音質とかそいうのはまあ普通なんですが、作り方が面白かったのでベストに入れてみました。

神々の山嶺

https://longride.jp/kamigami/

次に紹介するのは、『神々の山嶺』です。
日本の作品がフランスでアニメ化するという面白い制作がされています。「神々の山嶺」は結構もう何度か実写映画化されていたりオマージュ作品がでてたりとしますが、間違いなく一番クオリティが高いなと思っています。

映像のクオリティがとても凄いです。特に背景の大自然の描写やフランスメイドなのにちゃんと日本している日本の描写がとても良いのですが、その色が問題です。色が繊細すぎて、白がしっかり出ていないとまず成り立たない雪山の作画。色ムラなんてあった日には大惨事です。

そしてはっきりした色を使っているのですが、全体的にちょっとセピアっぽい雰囲気の色味が多い感じです。DLPはまだしもSXRDはちょっと状態がいいプロジェクターじゃないと厳しいかもしれません。DLPもコンバージェンスがずれようものなら雪の世界が大変な事になります。

そして、サウンドデザインも素晴らしいです。こいう音入れてくれればいいのにな日本も。と思いました。
ただ唯一の心残りは私が観たのは吹き替え版でした。オリジナルの音源と吹き替えのレベルがマッチしていなかったのと、音質も全く違いすぎて本当に残念でした。

THE BATMAN ザ・バットマン

https://wwws.warnerbros.co.jp/thebatman-movie/

ダークナイトしかり、バットマンって頭悪い感じのサウンドにしないといけない病気にでもかかっているのかっていうぐらい元気なサウンドです。
下手なホームシアターも劇場でもスペックの4割も再生できないんじゃないでしょうか。
SWも大事なんですが、実はLRにめちゃくちゃ負担のかかるちょっと珍しいサウンドデザイン。どっちかいうとLRがどこまで下まで鳴らしても破綻しないかが鍵じゃないかなって思います。

あと絵ですが、全体的にめちゃくちゃ暗い。ドルシネぐらいじゃないとマジで暗い。
僕の映画館でももうちょっと追い込んでおくべきだったと思うぐらい暗いです。白〜黒ではっきり階調が出せないところは厳しいので映像も試されます。

シング ネクストステージ

https://www.nbcuni.co.jp/movie/sp/sing2/index.html

バズ・ライトイヤー』と最後まで悩んだんですが、面白さ的に『シング』を取りました。
バズ・ライトイヤー』はめちゃくちゃ音と絵が良すぎるんですが、優等生すぎて面白みがないのです。いやレベルが高すぎてなんだこれ気持ち悪いなってぐらい凄いクオリティなんですが、ちょっと優等生すぎました。

『シング ネクストステージ』を選んだ理由は、まず音楽です。そいう題材のお話なので当たり前ですが、めちゃくちゃ音楽のサウンドミックスが素晴らしいです。めちゃくちゃ下の帯域まで気持ちよく入っており、「bad guy」なんてうっひょおおおきもちいぜえええってIQ下がりまくりなクラブサウンドです。オリジナルのサウンドデザイン的にもあれはモワつかせるのが正しいデザインなので、気持ちよく踊りましょう。もたつくSWやLCRのスピーカーでは台無しですので機材に厳しいです。

それと絵ですが、1作目と同様、FLATサイズなのですが、絵作りが上手く画がとても広く感じます。色使いもカラフルで色味が多いため、プロジェクターのデモとしても面白いかもしれません。

トップガン マーヴェリック

https://topgunmovie.jp/theater/

まあ、今年の作品でこれは外せないかなと思います。
プロジェクターのセッティングが甘いと、戦闘機の裏面の影の部分の色がうまく出ずボケます。プロジェクターのミニ知識ですが、DLPは白黒のチェッカーフラッグのようなパターンがとても苦手だそうです。戦闘機が空飛んでる時の描写ってそれに近い部分があるため、結構プロジェクター泣かせかなと思います。あとコントラスト甘いと動体が速いのもあって微妙に見辛い。フォーカスもかっちり合わせたいですが、明るい空のシーンが多いのでDLPプロジェクターはモアレが目立って大変かもしれません。なかなか難しい映画です。

音に関してはもう戦闘機のドパッって音やエンジン音もそうですし、OPの戦闘機ひっかけるワイヤーのしなる音が個人的に結構キモだとおもっています。劇場のバランス悪いとあのしなりの音がちょっと微妙になるんですよね。響き加減のようなものがズレると言うかなんというか。

 

さて以上がベスト5ですが、ちょっと番外編

アバター ウェイ・オブ・ウォーター

https://www.20thcenturystudios.jp/movies/avatar2

クオリティを見ると言いつつアバター入ってないんだ?って思うかもしれませんが、正直僕今回アバターをあまり評価していません。

ドルシネのフルスペックで観れば少し印象が変わるかもしれませんが、通常館に回されてるバージョンの出来が微妙すぎて、評価が低いです。

今回は珍しいHFR(ハイフレームレート)という映画の通常のフレームレートが24fpsのところ48fpsという二倍のフレームレートでの配給がされています。

そして、IMAX以外では2Dでの4KHFRはないようで、HFRは2Kとなります(日本国内だとIMAXは3Dしかないようです。書き方悪くてごめんね)。
4Kのデータも配給されてはいて24fpsとなっています。

問題は4Kの質が2Kより悪い。
2KのHFRの方が綺麗に見え、HFRだからかなとも思ったんですが、なんか色がそもそも違う感じがするのと4Kの高解像度感がなぜかあんまりない。
あとなぜか5.1chしかない。71どこやった。アトモスあってこのクラスの作品なら71も作ってるはずだけど・・・メディアとしてのスペックゴリ押しをしたいのかそうじゃないのかはっきりしてほしい。

あと個人的には目障りだから48fps固定してほしい

一番売りたいのは3D4KHFRでアトモスのドルシネだと思いますが、なんか末端のバージョンが低品質だと上位バージョンへの評価もあまり期待値あがらんなという感じです。

とはいえ、ちょっと時間が合わなくてまだ観れてないのでドルシネのフルスペックではそのうち見てこようと思います。フルスペックの映画って多分しばらく来ないと思うので。

という事で番外編でした。

 

以上が今年の個人的なベスト映画たちです。めちゃくちゃ単純に今年のベスト何って言われたら全く違う作品だらけになりますが、話の内容で語れるほど語彙力ないのでやめました。

さてさて、今年も一年ありがとうございました。皆様が来年も良い映画ライフをおくれますようにと願っています。

ではまた来年、良いお年を。

『RRR』を映写視点で観るよ。

rrr-movie.jpこんにちは、久々の更新です。

今回は巷でめっちゃ盛り上がっている『RRR』を観てみようと思います。

映画館で映画を観るエンタメを詰め込んだインド映画

『RRR』は映画館で観てこそ楽しい映画の一つだと思います。
僕、映写技師みたいな事してるのにこんな事いうと怒られるかもしれませんが、人と映画観るのが嫌なので、職場で営業時間外か家でしか映画観ないんです。他館に行くときは映画ではなくシステムを観に行っている感覚ですね。
そんな僕が!これは人と見ると楽しい!!!と思ってしまったほどインドパワーは凄いと思います。
同じ監督の『バーフバリ』や、あれなんだっけ、ハエの奴...すみませんタイトル忘れました。とか他のインド映画も何作品か観てますが(全部ちゃんと見てるのにタイトルが出てこない)どれも映画として映画館で観て楽しい映画です。家で観るのがもったいない。やはり音楽とダンスのせいでしょうか。

『RRR』の映像を観て行くよ

『RRR』の映像は、SCOPEサイズの2K画質です(IMAXバージョンの画面サイズがあるかはちょっと知りません)。
一般的な映画と変わりませんが、色の作り方がインド映画ってちょっと特殊かなって思っています。専門家ではないので何がとはわかりませんが、他の映画よりコントラストが高いような、はっきりした色が多いと思います。

SCOPEサイズなため、TCX等のラージスクリーンだとスクリーンに対して余白ができるため小さく見えてしまいますので額縁や余白が嫌いな人は普通の映画館で観るといいと思います。

『RRR』の音を観て行くよ

スペック的には普通の5.1chです。7.1chとかアトモスは日本ではないと思います(あったらゴメン)。

『RRR』に限らず、インド映画あるあるなのですが、音声が全てアフレコです。なので口の動きと音が全く合っていません。
聞いた話では、インドって使われてる言語がめちゃくちゃ多いらしく、その地域の言語に合わせるためだとかなんとか。
しかしその分、台詞ははっきり入っているのでとても聞き取りやすいです。
ただ英語とインドの言葉でだいぶ録音違いますね。言語としての癖の違いからくる問題でしょうか。

音楽はめちゃくちゃ気持ちよく入っています。こまけぇことはいいんだよっていう気持ちにさせてくれる音楽です。
ボーカルの声もとても綺麗に入っており、インド映画の質の高さに圧倒されます。
映像の作り方も壮大ですが、音楽の作り方や音作りも壮大です。テレビとは違うのだよテレビとはというのを解らされます。もう一度言いますが、テレビとは違うんだよ。な?

しかし、3時間もあるこの映画、さすがに疲れるんじゃないか?と思ったんですが、疲れません。出るとこ出してるし、基本ワイワイしている映画なので何故だ?と思ってインプットのインジケーターをふと見て気づいたのですが、サラウンドを全く使わないシーンが結構あります。
それに必要ない音をしっかりカットしています。
日常シーン等でもサラウンドって意識していない雑音の音などで使ってる事が多いのですが、まったく使ってないシーンがかなりあり、こいう使う使わないのメリハリで耳休めが自然とされるため疲れない音になっているんだなと勉強になりました。

音質もよくあるシャリシャリなHiよりの音ではなくしっかり重心のある音なのも重要な要素かと思います。ちょっとシーンによっては籠る時ありますが。
音がクリアで通る=スカスカのすっきりした音ではないの事が良く分かります。

とまあ質的にもかなり高クオリティな映画なのがわかりますね。

インド映画は、映画を楽しむのに必要な事が全て詰まっているんだよ。
是非、映画館で観てください。

映画館の「リップシンク」

こんにちは、今日は「リップシンク」について考えて行くよ。

 

リップシンクとは。

リップシンクってなんぞやって人に解説すると、音と画の同期の事です。
リップってそのまま唇の事だった気がする。人がしゃべるとき、口の動きと聞こえてくる音がずれると、いっこく堂さんみたいになったりしちゃったり、音楽や効果音が目で見た視覚情報と一致しなくて気持ち悪くなります。なので映画館ではちゃんとリップシンクを調整します。

おもにDCPの話をするよ。35mmはなんか最近やってなかったせいで細かいところ忘れちゃって上手く話せないから、今度やった時に思い出したら書きます。

 

なぜ調整が必要なのか

DCPを再生した時にデータからの映像と音の信号はほぼ同時によーいどんで発信されているとは思いますが、音響機器やプロジェクターを通っている間にいろんな処理が行われ、同じ機械じゃないからどんどん遅延の具合がずれて行きます。

基本的に映像処理の遅延の方が大きいので映像がとても遅れて表示されます。
そうすると、映像と音がズレてしまい、観ててかなりストレスになるので、しっかり合わせます。

どうやって合わせるのか

測定器があります。その測定器をつかって合わせて行きます。
僕がよく観る測定器は1ms単位で測定できるので、1ms単位で合わせていきます。
まず白い四角い点滅映像とその点滅と同時に1kHzのポッポッポッポって鳴るデータをループで再生し、測定器で画と音のズレを測定し、SMSサーバーの音声側か音響機器の方にディレイを入力していきます。

基本的に、出力を速くする事はできないので、出が速い方にディレイをかけていくスタンスですね。

大よそドルビーポイントと言われるポイントか、Bチェーン時に主となるマイク位置の席で合わせます。

リップシンクがズレているというのは

僕の劇場は僕が神経質なのもあって測定ポイントで測定器が0ms表示になるまで調整しますが、だんだん疲れてくるので測定器を微妙に前後に動かしたりしてごまかry

いえ、ちゃんと調整しますが、30msぐらいのズレだとあんまり気にしなくてもいいかもしれません。何故なら、音速340m/秒なので、1msずれると34cm分到達時間がズレます。劇場はニアフィールドというには少し広いので、測定ポイントより10m前のスクリーンに近い座席では、約30ms速く音が聞こえます。逆に後ろになれば音の到達もそれだけ遅くなりますので結局ズレます。41ms以上ずれるとだいたい24fpsの1フレーム分ずれるのでちょっと気持ち悪いですが、結構みなさん、最前列で観たり最後列で観たりしていると思います、しかしそこを気になったって言っている人を一般の人で僕は観た事がありません。IMAXとかの大型の劇場であれば顕著に感じるかもしれませんが。

それと理屈は分かりませんが、音と画が100%合っている状態ってなんか逆にシンクがズレて感じるんですよね。いやほんと理屈はわからないんですが。

音の到達がLRで1msずれるというのは大参事というか大問題なんですが(とはいえ1msレベルで追い込むには箱とか色々な問題があって大変)、画と音に関してのリップシンクについては少し雑に考えても大丈夫かなと思っています。

以前、測定器が無くて、感覚だけで僕とインストーラー業者のベテラン2人の3人でリップシンクを合わせに行った事があったんですが、後日測定器で測ると30msずれてました。そんぐらい難しいです。

まあどのみち、1kHzだけで測定しているので、他の帯域ではちょっとずれてる可能性が高いですけどね。主にLFE。

 

ちょっとした雑学的な感じでした。

 

 

映画館で行うブルーレイ上映

こんにちは、今回は映画館でブルーレイ上映について書いていきます。

 

小さい配給作品や、過去作品でディスク化されている旧作などでは、DCPや35mmフィルムが存在しなかったり権利の問題で、ブルーレイディスクを使い上映する事があります。ミニシアターでは結構頻繁に行われていたりしますね。

その方法と感想です。

 

映画館でBD/DVDを上映する

まずもって、映画館でBD/DVDをどうやって上映するかという話です。
みんなも驚きの、市販している民生機のプレイヤーを使います。

用途は業務なのに。

これは現行でのBD/DVDの映画館の上映業務に耐えうる業務機が無いのでそうなります。使うとしても以前はVictorとかもありましたが今はTASCAMとかデノンで出ているやつでしょうか。そもそも音質も画質も民生機の方が高かったです。あと理由をわすれてしまったのですが、すげえ映画館のオペレーションで使いにくい感じなのとイベントの単発で使うなら問題なかったのですが、映画のフル尺を上映するには不向きだった記憶があります。

35mm映写機時代からブルーレイ上映というのはしばしありましたが、その時は小型の業務用DLPを使い上映していました。

デジタルシネマになってからは外部入力の機能が充実し、大抵のメーカーのプロジェクター(SMSサーバー)でHDMI(またはDVI-D)、HD-SDIが受けられるようになり、最近のモデルは音声もHDMIでそのまま音響ラックに飛ばせるので楽になっています。

 

接続には何パターンかあります。恐らくスタンダードな3タイプが下の図な感じ



①のパターンでは、プレイヤーからシネマプロセッサーとプロジェクターまではHDMIケーブルで接続し、アンプはシネマプロセッサーで常設されているラインを使えるのでとてもシンプルで楽に設置できます。

CP850とか950はHDMIのパススルーができ、その時音声だけ拾って映像はプロジェクターに落とせるので可能な手段です。650とかはできません。750や他のプロセッサーはわからん・・・

バルコのICMP-Xとかの一部あたらしめのSMSサーバーとかはサーバーにHDMIケーブルを挿せば音声を普通にプロセッサーにも送ってくれるのでもっと楽です。

 

②のパターンはプレイヤーに映像と音声をセパレートして送れるプレイヤーか分配器がある場合で可能な方法です。メリットとしては音声を7.1chアナログアウトプットで出来る場合はCP650等でも無理やり受ける事が出来るという事です。ケーブルを作成する必要はありますがRCA→D-sub25pinにすれば出力できます。抵抗とかその辺はわすれました。
機材の問題でこのパターンしか取れない場合があります。

 

③はちょっと特殊かもしれません。こちらも映像と音声をセパレート出来る事が前提ですが、アンプに直行させています。アレこっちの方が②より簡単では?と思う人が居ると思いますが、実はダルイんです。主に音声周りが。
②のパターンはD-subでの接続をした場合になりますが、基本的にケーブルはプロセッサー側のD-subを一本抜き差しするかスイッチャーを創れば準備できます。しかしこの③のパターンは全てのチャンネルのアンプの抜き差しをしなければいけないので結構めんどうくさい。さらに間違えたり忘れたりすると次のDCP上映で音のチャンネル間違ったり、出なかったりするのでリスクも高いです。

しかしプレイヤーとアンプの間にデジタルミキサーが噛ませられる場合は別です。インプットを切り替えるだけなので簡単にできます。

どのパターンを選ぶかは現状の設備次第です。映画館の場合はオペレーションも絡んでくるので、とりあえず上映できればいいという気持ちでやると痛い目にあいます。

それにここに分配器で確認用のサブディスプレイも噛ませたりといろいろ拡張もしていく事が多いです。

普通に上映しているがデメリットとリスクが高い

いろんな映画館で普通にブルーレイでの上映はしています。
しかし、みなさんが考えている以上にこの上映形態はデメリットとリスクが高いので、映写としてはほんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんttttttっとおおうにやりたくないです。

まず、クオリティ面での話をします。
もんすげー単純にリップシンクの同期が取れません。なので当たり前ですが結構ズレます。まあほとんどの人は気にしていませんが、スゲーズレマス。

ただ①のパターンで少し紹介したSMS直差しであればこれは回避できると思います。プレイヤー側で信号の遅延が無ければの話。

映画館の音響設備で一番の遅延が発生するのは恐らくプロジェクターの映像投影です。本来のDCP上映では映像と音声をシンク測定器を使用してディレイを音声側にかけて調整します。サーバー側の送り出しにディレイをかけるかプロセッサーDSPでディレイをかけるかはケースバイケースですが、結構大事な感じで調整します。

民生機のプレイヤーを使っているので、民生機のリップシンクのオート調整が使える環境下であればクリアできますが、映写室と劇場の距離の問題とかでほぼ使えないですし、そもそも調整機能ついてないプレイヤーもあります。
あんまり民生機詳しくないので本当はいい方法があるのかもしれませんが、業務用の環境を考えて作られていないのでしょうがないです。

あと映像の色味の問題があります。
映画館のプロジェクターはDCI基準の色域のセッティングをしているのですが、プレイヤー側の色域の基準が若干ちがいます。一応プレイヤー側の方で、設定が有る場合はDCIの色域に合わせるんですが、どうも色が合わないんですよね。この辺詳しい人いたらむしろ教えてください。民生機マジ分からん。

あと、映像関係でのプロジェクターのインプットの縛りがめんどくさいです。プログレッシブ方式でないとダメとかRGB入力じゃないとダメとか結構しばりがあります。

それに当然ですが、映像も音声もプレイヤーの品質にめちゃくちゃ左右されます。

 

次にオペレーション関係です。

映画館は映画の再生以外にも客電をオンオフしたり、非常誘導灯をオンオフしたり、カーテンマスクを動かしたり結構いろんなアクションを行います。
フィルムやDCPはオートで出来ます。手動でやっている昔ながらの映画館もあるとは思いますが、シネコンは100%全自動でしょう。

ブルーレイ上映はプロジェクターをただのプロジェクターとしてしか使わないので、そのオートメーション機能が全て手動になります。

まず開演のチャイムならしてー電気けしてー、再生おしてー映像映る前にぷろじぇくたーのしゃったーあけてーおんせいみゅーとかいじょしてー

とセルフでやっていかないといけません。終映時に「あ、ちょっとおなか痛い」ってなってトイレ籠ったら誰も止めてくれないので大参事です。客電も点灯しません。

それとブルーレイ上映の悪しき習慣で、普通に市販のディスクを使っている事が多いです。酷いと普通にA○azon直送できます。

その場合、メニュー画面とか、このディスクは営利目的では使えません的なあの文もふつうに映ります。いや営利目的で上映してるがなあ!?って思いながらいつも見ています。お客さんにそれらを見せると、1900円払ってるのになんか家みたいだな。。。ってなってしまうので、それらの画面や、プレイヤーで出ちゃうメーカーロゴみたいなのとかも見せないように頑張る必要があります。

しかもメモリーじゃなくてディスクなので読み込み時間がかかるため、プロジェクターのシャッター機能も使いながら如何に普通の映画上映に見せるかの戦いです。

余談ですが、このプロジェクターのシャッター機構。結構壊れます。とあるメーカーなんて、仕様で壊れるから使わないでねてへぺろって言ってるぐらいです。

細かい事書けばもっとあるんですが、長くなりすぎるのでこの辺で止めておきます。

 

とにかく怖い仕事ってやつです。

 

まあ最後になにより、これに尽きるんですが。

めっちゃ再生が止まる

家だったら、「あれ、なんか止まったな」で済みますが、こちとら映画館での上映なんですよね。ただじゃ済まないんすよ…でも民生機のプレイヤーは悪くないんですよ。だって業務用で使ってしまっているこっちが悪いんだから!!そもそもディスクっていう物理的に回転している物の読み込みってリスクしかないよね。

これやると分かるんですが思っている以上にプレイヤーがフリーズする可能性って高いです。

 

さて、本当に嫌いなのでネガティブキャンペーンばっかりしましたが、ブルーレイでも映画館でみると全然楽しさが違うなって思ってもらえるというポジティブな気持ちもあります。でも嫌いです。

映画館でブルーレイ上映を見かけたら、なんだーブルーレイかーと思わず、映写さんの頑張ってる勇士も含めて、楽しんでみてください。