映写雑記

映画館の設備視点

映写技師が選ぶ2022年の映画ベスト5

こんにちは、日付変わって大晦日になってしまいましたが、今年の観た映画の中で個人的に良かった映画ベスト5を書いていこうと思います。

もちろん話の内容は度外視で、絵と音のクオリティを映写としての観点から良いと思って選んだベスト発表になります。

ちなみにベスト5なだけでランキングはつけてません。

女神の継承

https://synca.jp/megami/

韓国のホラー映画の『女神の継承』が入ります。
これ、ドキュメンタリー風の作風なので、テレビの取材みたいな感じの絵と音作りがベースになっているんですが、リアルすぎて怖いです。ああ、そうそう取材の音ってこんなんだよね、とかハンディカムで撮ってるとこんな音入るよねみたいなそんな中にめちゃくちゃ急にホラーなサウンドデザインが放り込まれて、とにかく怖いです。絵もわかりにくい暗所のシーンも多く、プロジェクターのコントラストや劇場の迷光などの対策が試されます。ランプ暗くしてると台無しな感じですね。

音質とかそいうのはまあ普通なんですが、作り方が面白かったのでベストに入れてみました。

神々の山嶺

https://longride.jp/kamigami/

次に紹介するのは、『神々の山嶺』です。
日本の作品がフランスでアニメ化するという面白い制作がされています。「神々の山嶺」は結構もう何度か実写映画化されていたりオマージュ作品がでてたりとしますが、間違いなく一番クオリティが高いなと思っています。

映像のクオリティがとても凄いです。特に背景の大自然の描写やフランスメイドなのにちゃんと日本している日本の描写がとても良いのですが、その色が問題です。色が繊細すぎて、白がしっかり出ていないとまず成り立たない雪山の作画。色ムラなんてあった日には大惨事です。

そしてはっきりした色を使っているのですが、全体的にちょっとセピアっぽい雰囲気の色味が多い感じです。DLPはまだしもSXRDはちょっと状態がいいプロジェクターじゃないと厳しいかもしれません。DLPもコンバージェンスがずれようものなら雪の世界が大変な事になります。

そして、サウンドデザインも素晴らしいです。こいう音入れてくれればいいのにな日本も。と思いました。
ただ唯一の心残りは私が観たのは吹き替え版でした。オリジナルの音源と吹き替えのレベルがマッチしていなかったのと、音質も全く違いすぎて本当に残念でした。

THE BATMAN ザ・バットマン

https://wwws.warnerbros.co.jp/thebatman-movie/

ダークナイトしかり、バットマンって頭悪い感じのサウンドにしないといけない病気にでもかかっているのかっていうぐらい元気なサウンドです。
下手なホームシアターも劇場でもスペックの4割も再生できないんじゃないでしょうか。
SWも大事なんですが、実はLRにめちゃくちゃ負担のかかるちょっと珍しいサウンドデザイン。どっちかいうとLRがどこまで下まで鳴らしても破綻しないかが鍵じゃないかなって思います。

あと絵ですが、全体的にめちゃくちゃ暗い。ドルシネぐらいじゃないとマジで暗い。
僕の映画館でももうちょっと追い込んでおくべきだったと思うぐらい暗いです。白〜黒ではっきり階調が出せないところは厳しいので映像も試されます。

シング ネクストステージ

https://www.nbcuni.co.jp/movie/sp/sing2/index.html

バズ・ライトイヤー』と最後まで悩んだんですが、面白さ的に『シング』を取りました。
バズ・ライトイヤー』はめちゃくちゃ音と絵が良すぎるんですが、優等生すぎて面白みがないのです。いやレベルが高すぎてなんだこれ気持ち悪いなってぐらい凄いクオリティなんですが、ちょっと優等生すぎました。

『シング ネクストステージ』を選んだ理由は、まず音楽です。そいう題材のお話なので当たり前ですが、めちゃくちゃ音楽のサウンドミックスが素晴らしいです。めちゃくちゃ下の帯域まで気持ちよく入っており、「bad guy」なんてうっひょおおおきもちいぜえええってIQ下がりまくりなクラブサウンドです。オリジナルのサウンドデザイン的にもあれはモワつかせるのが正しいデザインなので、気持ちよく踊りましょう。もたつくSWやLCRのスピーカーでは台無しですので機材に厳しいです。

それと絵ですが、1作目と同様、FLATサイズなのですが、絵作りが上手く画がとても広く感じます。色使いもカラフルで色味が多いため、プロジェクターのデモとしても面白いかもしれません。

トップガン マーヴェリック

https://topgunmovie.jp/theater/

まあ、今年の作品でこれは外せないかなと思います。
プロジェクターのセッティングが甘いと、戦闘機の裏面の影の部分の色がうまく出ずボケます。プロジェクターのミニ知識ですが、DLPは白黒のチェッカーフラッグのようなパターンがとても苦手だそうです。戦闘機が空飛んでる時の描写ってそれに近い部分があるため、結構プロジェクター泣かせかなと思います。あとコントラスト甘いと動体が速いのもあって微妙に見辛い。フォーカスもかっちり合わせたいですが、明るい空のシーンが多いのでDLPプロジェクターはモアレが目立って大変かもしれません。なかなか難しい映画です。

音に関してはもう戦闘機のドパッって音やエンジン音もそうですし、OPの戦闘機ひっかけるワイヤーのしなる音が個人的に結構キモだとおもっています。劇場のバランス悪いとあのしなりの音がちょっと微妙になるんですよね。響き加減のようなものがズレると言うかなんというか。

 

さて以上がベスト5ですが、ちょっと番外編

アバター ウェイ・オブ・ウォーター

https://www.20thcenturystudios.jp/movies/avatar2

クオリティを見ると言いつつアバター入ってないんだ?って思うかもしれませんが、正直僕今回アバターをあまり評価していません。

ドルシネのフルスペックで観れば少し印象が変わるかもしれませんが、通常館に回されてるバージョンの出来が微妙すぎて、評価が低いです。

今回は珍しいHFR(ハイフレームレート)という映画の通常のフレームレートが24fpsのところ48fpsという二倍のフレームレートでの配給がされています。

そして、IMAX以外では2Dでの4KHFRはないようで、HFRは2Kとなります(日本国内だとIMAXは3Dしかないようです。書き方悪くてごめんね)。
4Kのデータも配給されてはいて24fpsとなっています。

問題は4Kの質が2Kより悪い。
2KのHFRの方が綺麗に見え、HFRだからかなとも思ったんですが、なんか色がそもそも違う感じがするのと4Kの高解像度感がなぜかあんまりない。
あとなぜか5.1chしかない。71どこやった。アトモスあってこのクラスの作品なら71も作ってるはずだけど・・・メディアとしてのスペックゴリ押しをしたいのかそうじゃないのかはっきりしてほしい。

あと個人的には目障りだから48fps固定してほしい

一番売りたいのは3D4KHFRでアトモスのドルシネだと思いますが、なんか末端のバージョンが低品質だと上位バージョンへの評価もあまり期待値あがらんなという感じです。

とはいえ、ちょっと時間が合わなくてまだ観れてないのでドルシネのフルスペックではそのうち見てこようと思います。フルスペックの映画って多分しばらく来ないと思うので。

という事で番外編でした。

 

以上が今年の個人的なベスト映画たちです。めちゃくちゃ単純に今年のベスト何って言われたら全く違う作品だらけになりますが、話の内容で語れるほど語彙力ないのでやめました。

さてさて、今年も一年ありがとうございました。皆様が来年も良い映画ライフをおくれますようにと願っています。

ではまた来年、良いお年を。