映写雑記

映画館の設備視点

映画館で行うブルーレイ上映

こんにちは、今回は映画館でブルーレイ上映について書いていきます。

 

小さい配給作品や、過去作品でディスク化されている旧作などでは、DCPや35mmフィルムが存在しなかったり権利の問題で、ブルーレイディスクを使い上映する事があります。ミニシアターでは結構頻繁に行われていたりしますね。

その方法と感想です。

 

映画館でBD/DVDを上映する

まずもって、映画館でBD/DVDをどうやって上映するかという話です。
みんなも驚きの、市販している民生機のプレイヤーを使います。

用途は業務なのに。

これは現行でのBD/DVDの映画館の上映業務に耐えうる業務機が無いのでそうなります。使うとしても以前はVictorとかもありましたが今はTASCAMとかデノンで出ているやつでしょうか。そもそも音質も画質も民生機の方が高かったです。あと理由をわすれてしまったのですが、すげえ映画館のオペレーションで使いにくい感じなのとイベントの単発で使うなら問題なかったのですが、映画のフル尺を上映するには不向きだった記憶があります。

35mm映写機時代からブルーレイ上映というのはしばしありましたが、その時は小型の業務用DLPを使い上映していました。

デジタルシネマになってからは外部入力の機能が充実し、大抵のメーカーのプロジェクター(SMSサーバー)でHDMI(またはDVI-D)、HD-SDIが受けられるようになり、最近のモデルは音声もHDMIでそのまま音響ラックに飛ばせるので楽になっています。

 

接続には何パターンかあります。恐らくスタンダードな3タイプが下の図な感じ



①のパターンでは、プレイヤーからシネマプロセッサーとプロジェクターまではHDMIケーブルで接続し、アンプはシネマプロセッサーで常設されているラインを使えるのでとてもシンプルで楽に設置できます。

CP850とか950はHDMIのパススルーができ、その時音声だけ拾って映像はプロジェクターに落とせるので可能な手段です。650とかはできません。750や他のプロセッサーはわからん・・・

バルコのICMP-Xとかの一部あたらしめのSMSサーバーとかはサーバーにHDMIケーブルを挿せば音声を普通にプロセッサーにも送ってくれるのでもっと楽です。

 

②のパターンはプレイヤーに映像と音声をセパレートして送れるプレイヤーか分配器がある場合で可能な方法です。メリットとしては音声を7.1chアナログアウトプットで出来る場合はCP650等でも無理やり受ける事が出来るという事です。ケーブルを作成する必要はありますがRCA→D-sub25pinにすれば出力できます。抵抗とかその辺はわすれました。
機材の問題でこのパターンしか取れない場合があります。

 

③はちょっと特殊かもしれません。こちらも映像と音声をセパレート出来る事が前提ですが、アンプに直行させています。アレこっちの方が②より簡単では?と思う人が居ると思いますが、実はダルイんです。主に音声周りが。
②のパターンはD-subでの接続をした場合になりますが、基本的にケーブルはプロセッサー側のD-subを一本抜き差しするかスイッチャーを創れば準備できます。しかしこの③のパターンは全てのチャンネルのアンプの抜き差しをしなければいけないので結構めんどうくさい。さらに間違えたり忘れたりすると次のDCP上映で音のチャンネル間違ったり、出なかったりするのでリスクも高いです。

しかしプレイヤーとアンプの間にデジタルミキサーが噛ませられる場合は別です。インプットを切り替えるだけなので簡単にできます。

どのパターンを選ぶかは現状の設備次第です。映画館の場合はオペレーションも絡んでくるので、とりあえず上映できればいいという気持ちでやると痛い目にあいます。

それにここに分配器で確認用のサブディスプレイも噛ませたりといろいろ拡張もしていく事が多いです。

普通に上映しているがデメリットとリスクが高い

いろんな映画館で普通にブルーレイでの上映はしています。
しかし、みなさんが考えている以上にこの上映形態はデメリットとリスクが高いので、映写としてはほんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんttttttっとおおうにやりたくないです。

まず、クオリティ面での話をします。
もんすげー単純にリップシンクの同期が取れません。なので当たり前ですが結構ズレます。まあほとんどの人は気にしていませんが、スゲーズレマス。

ただ①のパターンで少し紹介したSMS直差しであればこれは回避できると思います。プレイヤー側で信号の遅延が無ければの話。

映画館の音響設備で一番の遅延が発生するのは恐らくプロジェクターの映像投影です。本来のDCP上映では映像と音声をシンク測定器を使用してディレイを音声側にかけて調整します。サーバー側の送り出しにディレイをかけるかプロセッサーDSPでディレイをかけるかはケースバイケースですが、結構大事な感じで調整します。

民生機のプレイヤーを使っているので、民生機のリップシンクのオート調整が使える環境下であればクリアできますが、映写室と劇場の距離の問題とかでほぼ使えないですし、そもそも調整機能ついてないプレイヤーもあります。
あんまり民生機詳しくないので本当はいい方法があるのかもしれませんが、業務用の環境を考えて作られていないのでしょうがないです。

あと映像の色味の問題があります。
映画館のプロジェクターはDCI基準の色域のセッティングをしているのですが、プレイヤー側の色域の基準が若干ちがいます。一応プレイヤー側の方で、設定が有る場合はDCIの色域に合わせるんですが、どうも色が合わないんですよね。この辺詳しい人いたらむしろ教えてください。民生機マジ分からん。

あと、映像関係でのプロジェクターのインプットの縛りがめんどくさいです。プログレッシブ方式でないとダメとかRGB入力じゃないとダメとか結構しばりがあります。

それに当然ですが、映像も音声もプレイヤーの品質にめちゃくちゃ左右されます。

 

次にオペレーション関係です。

映画館は映画の再生以外にも客電をオンオフしたり、非常誘導灯をオンオフしたり、カーテンマスクを動かしたり結構いろんなアクションを行います。
フィルムやDCPはオートで出来ます。手動でやっている昔ながらの映画館もあるとは思いますが、シネコンは100%全自動でしょう。

ブルーレイ上映はプロジェクターをただのプロジェクターとしてしか使わないので、そのオートメーション機能が全て手動になります。

まず開演のチャイムならしてー電気けしてー、再生おしてー映像映る前にぷろじぇくたーのしゃったーあけてーおんせいみゅーとかいじょしてー

とセルフでやっていかないといけません。終映時に「あ、ちょっとおなか痛い」ってなってトイレ籠ったら誰も止めてくれないので大参事です。客電も点灯しません。

それとブルーレイ上映の悪しき習慣で、普通に市販のディスクを使っている事が多いです。酷いと普通にA○azon直送できます。

その場合、メニュー画面とか、このディスクは営利目的では使えません的なあの文もふつうに映ります。いや営利目的で上映してるがなあ!?って思いながらいつも見ています。お客さんにそれらを見せると、1900円払ってるのになんか家みたいだな。。。ってなってしまうので、それらの画面や、プレイヤーで出ちゃうメーカーロゴみたいなのとかも見せないように頑張る必要があります。

しかもメモリーじゃなくてディスクなので読み込み時間がかかるため、プロジェクターのシャッター機能も使いながら如何に普通の映画上映に見せるかの戦いです。

余談ですが、このプロジェクターのシャッター機構。結構壊れます。とあるメーカーなんて、仕様で壊れるから使わないでねてへぺろって言ってるぐらいです。

細かい事書けばもっとあるんですが、長くなりすぎるのでこの辺で止めておきます。

 

とにかく怖い仕事ってやつです。

 

まあ最後になにより、これに尽きるんですが。

めっちゃ再生が止まる

家だったら、「あれ、なんか止まったな」で済みますが、こちとら映画館での上映なんですよね。ただじゃ済まないんすよ…でも民生機のプレイヤーは悪くないんですよ。だって業務用で使ってしまっているこっちが悪いんだから!!そもそもディスクっていう物理的に回転している物の読み込みってリスクしかないよね。

これやると分かるんですが思っている以上にプレイヤーがフリーズする可能性って高いです。

 

さて、本当に嫌いなのでネガティブキャンペーンばっかりしましたが、ブルーレイでも映画館でみると全然楽しさが違うなって思ってもらえるというポジティブな気持ちもあります。でも嫌いです。

映画館でブルーレイ上映を見かけたら、なんだーブルーレイかーと思わず、映写さんの頑張ってる勇士も含めて、楽しんでみてください。